リクルート事件の捜査の主任検事が語る事件の舞台裏・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1550)】
サルスベリが桃色、淡紫色の花を、オニユリが橙色の花を、ネジバナ(モジズリ)が薄紫色の花を、エボルブルズ(アメリカンブルー)が青色の花を咲かせています。ヒイラギナンテンが水色の実を付けています。ヒマワリ、グラジオラス、ヒメヒオウギズイセン、ハイビスカス、アサガオも頑張っています。
閑話休題、『特捜は「巨悪」を捕らえたか――地検特捜部長の極秘メモ』(宗像紀夫著、ワック)で、私が注目したのは、やはりリクルート事件の舞台裏です。
「私が現職の検事時代に、私自身がかかわった一番大きな事件はなんといっても『リクルート事件』です。東京地検特捜部の副部長時代の事件でした。大きな事件の捜査に当たっては、副部長が主任検事を務めます。この事件は、私が副部長として捜査の主任検事という責任ある立場でまとめあげた事件です」。
「リクルート事件の中心にいるのは、いうまでもなく、4ルートの中心人物である江副(浩正)前会長でした。・・・彼に対する私の第一印象は、証人喚問のときの通りに『しぶとい男だな』というものでした。・・・江副氏は非常に粘り強くて、生木のように折れにくい、いくら追い詰められても、しなるけどまた元に戻るという印象です。・・・何日も取り調べが続きました。最終的に、江副氏に自白を決断させ、供述を得ることができました。事件というのは一人で成り立っているわけではありません。リクルート側と国会議員との間で、どういうやり取りがあったかといった状況を具体的に明らかにしたからこそ、ごまかすことができなくなった江副氏を自白に追い込むことができたのです」。
「たしかに江副氏の言うように、『被告人の真実』と『検察側の真実』とは対立することもあるのです。私は本書で、公開できる限りで、その『検察側の真実』を書いているつもりです。・・・江副氏は自らの著書でいろいろと反論していますが、リクルート事件では、多くの政治家に大量の未公開株がばらまかれていたことはまぎれもない事実です。・・・リクルートがやっていたことは、時の政権と強く結びついて、政府全体を買収してしまうようなものです。・・・リクルート事件は、たんに未公開株を譲渡して利益を与えたという事件ではなく、政治家や高級官僚の職務権限を利用するリクルート側と、そのリクルートから多額のカネを引き出す政治家・官僚の癒着構造が生み出した事件です」。
引用されている江副の著書『リクルート事件・江副浩正の真実』の中に、このような記述があります。<特捜からリクルートの法務部に、『マスコミを避けるため、そちらの指定の場所へ出向く』と連絡が入った。弁護人で元検察官の牧義行弁護士が取調検事を検察庁に迎えに出向き、リクルートグループのホテル『芝グランドホテル』で取調べを受けた。容疑は『証券取引法違反』だった>。因みに、ここに登場する牧義行は、私の従弟です。<就職協定が遵守存続され青田買いが無くなることが、私共会社の営業にとって重要なことでした。そのような訳で昭和59年から60年頃にかけて私共はこの就職協定を遵守存続させる為に各方面への働きかけを計画しこれを実行しておりました>。
江副との後日談にも言及しています。「私のいまの交友関係には、かつての『敵』も含まれています。・・・(コンサートでは)しばしば江副氏と顔を合わせたものです。お会いすると、江副氏は笑顔でいたずらっぽく、私を『宗像主任検事さん』と呼んだものでした。捜査当時のことに話が及ぶと、『あのときはお世話になりました。取り調べはきつかったですね』『江副さんは粘り強い人でしたね』などと、しばし和やかに会話を交わしたものでした。実際、江副氏は、悪く言えばしぶといし、よく言えば、粘り強いということができます。ものごとを諦めない。その精神力で撮り組めば、たしかに事業も成功するでしょう。ですから、リクルートをあれだけの大きな企業にすることができたのです。もし江副氏があんな事件にかかわらず、その後も経営者として腕を振るっていたら、どうなっていたでしょうか。かなりの業績をあげたのではないかと思います。そういう意味では、特捜部が彼を逮捕して立件したことによって、有能な経済人を一人つぶしてしまったということもできるかもしれません」。