思わずニヤリとしてしまう浮世絵集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1777)】
深紅の花、赤紫色の花を付けたクリスマスローズを見かけました。ボケ、ウメ、シダレウメも頑張っています。因みに、本日の歩数は10,296でした。
閑話休題、『ゆかいな浮世絵――滑稽と諷刺の世界』(狩野博幸監修、河出書房新社)は、滑稽な浮世絵、諷刺が利いた浮世絵が満載です。
昇斎一景の『東京名所三十六戯撰』には、明治初期の文明開化風俗が描かれています。「東京名所を描いた大判錦絵のシリーズで50図からなる。名所を舞台に人々が繰り広げる珍騒動がおもしろおかしく描かれている。広重ゆずりの細やかな風景の中に滑稽な人々を描くという構成が、より馬鹿馬鹿しくて魅力的な作品に仕上がっている」。
月岡芳年の『東京開化狂画名所』は、随所に諷刺が込められています。「新都東京の名所を背景に、当時の人々の風俗をユニークに紹介したシリーズで、現在40枚が知られている。名所絵と戯画を組み合わせるという趣向で、社会を諷刺した場面も描かれる」。
室町時代後期の『百鬼夜行絵巻』は、夜行する魑魅魍魎の愉快な世界です。「百鬼夜行は夜中に出没する妖怪たちの行列のことで、そのようすがおもしろくゆかいに描かれている。妖しげな美女の化粧姿、琴・琵琶・笙などのさまざまな楽器類、沓・扇・鍋・釜・五徳の台所用具や調度品の化物、鉾を持った青鬼などが連続して現れる。最後は日の出とともに闇の中に逃げ帰るすがたを描いている」。
江戸時代に近江国(滋賀県)大津の追分あたりで売られた素朴な民芸絵画「大津絵」は、「三井寺の参詣者や東海道を往来する旅人の手軽なみやげ物として全国にその名が知られた。大津絵は奔放な筆さばきが生む速度のある描線が魅力的で、明快でおおらかな彩色が楽しめる」。
江戸時代中期に大坂で流行った滑稽な絵「鳥羽絵」は、瞬く間に全国に広がり、江戸の浮世絵にも影響を与えました。「その内容は見るからに馬鹿馬鹿しいものだが、表情は豊かで躍動感にあふれている」。
「浮世絵で擬人化を好んで用いたのは歌川国芳で、猫、狸、鳥、亀などの哺乳類や爬虫類、魚介、植物、あるいは玩具など、人以外の生き物がまるで人のように立ち振る舞うすがたをゆかいに描いている。そのすがたは滑稽で愛らしく、とても身近に感じられる」。
思わずニヤリとしてしまう大型図説集です。