鬼界が島に流された俊寛は、強烈な個性の持ち主であった・・・【山椒読書論(543)】
【読書クラブ 本好きですか? 2021年4月4日号】
山椒読書論(543)
大型絵本『俊寛』(木下順二文、瀬川康男絵、ほるぷ出版)は、絵巻平家物語シリーズ全9巻の第3巻である。
平家打倒の企てが平清盛の知るところとなり、首謀者の藤原成経、平康頼、俊寛が鬼界が島に流されたが、清盛の怒りが激しい俊寛のみが許されず、ただ一人、島に残された――という、よく知られた『平家物語』のエピソードが、格調高い文章と、デフォルメされた印象的な絵によって展開されていく。
本書を読んで驚いたのは、俊寛という人物が強烈な個性の持ち主であったということだ。「『平家物語』は、俊寛の性格をはっきりと、『僧なれども、心もたけく、おごれる人』といっている。僧であるのに『天性不信第一の人』、つまり、信心のこころなどまるでなく、自分がかんとくをまかされている寺の物資も、寺の人びとをも、自分のものであるかのように使いまくって勢力をもち、清盛へは恩をあだでかえし、すべてのことにごうまんであった、というふうにかかれている。そしてその俊寛が、ものすさまじい鬼界が島に、ただ一人とりのこされるようになった、というのが、この『俊寛』一編の眼目である」。
こういう魅力的な絵本で『平家物難』に触れることのできる子供たちは、本当に幸せだ。