榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

『第三の男』、『市民ケーン』で強烈な印象を与えたオーソン・ウェルズの青春時代の活動・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2236)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年5月28日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2236)

ハス田で3羽の雛を育てるカルガモの母親を、じっくりと観察することができました。その隣の池で、縄張りをパトロールするトンボを撮影したが、不鮮明なため、オオヤマトンボかコヤマトンボかナゴヤサナエかオナガサナエか、はっきりしません(涙)。因みに、本日の歩数は11,869でした。

閑話休題、『オーソン・ウェルズ 青春の劇場』(リチャード・フランス著、山崎正和訳、講談社学術文庫)は、映画『第三の男』、『市民ケーン』で強烈な印象を与えたオーソン・ウェルズの青春時代の活動を丹念に辿っています。

「ウェルズはそうした映画の名優であるまえに、じつは天才的な舞台俳優でもあり、演出家であり、舞台美術家であり、演劇制作者でもあった。彼は天才の名にふさわしく、1930年代後半のわずか5年ばかりのあいだに、自分の才能のすべての可能性を爆発させて、独創的で実験的な舞台を矢つぎばやに作りあげた。後年、彼が映画で見せた前衛的な演出技法や、俳優としてのあくの強い個性表現は、すべてこの初期の『青春の劇場』で用意されたものであった。20数歳のウェルズは恐るべき自信と勢力に溢れ、狂信的で独裁的で、自己顕示欲の塊のような青年であった。そして、芸術家としての彼は『芝居がかり』の権化というべき存在であって、それだけを武器として、徹底的にスキャンダラスな舞台を作りあげたのであった」と、訳者がまえがきで述べています。

「ウェルズが青年にしてすでにそなえていたずうずうしさと、精力と、本物の才能、そして尋常ならぬ呪縛力の証明として注目すべきものである」。

「彼は、映画においても舞台においても、彼以前のあるいは以後のだれに比べても、メロドラマ的なタイミングを計る効果的な感覚を持っていたのに違いない。・・・『市民ケーン』も同様のシークェンスの技巧を持っていて、それらは、要点を明らかにし、クライマックスを達成すると、すばやく次の場面に道をゆずった。・・・ウェルズは『市民ケーン』を、主人公の巨大な富を異様に喜劇的な手法で視覚化することによって、その偉大さが不遜に転じるような仕方で演出した」。

「ウェルズの放送のなかでもっとも成功したのは、いうまでもなく、あの『宇宙戦争』であった。それは、ラジオ技術の操作(この場合、報道事件についての重みのある単語)によっては、宇宙からの侵略というほど荒唐無稽のことにさえ、人心を動かすような論理を与えることができる、ということを明らかにしたのである」。

「26歳までに、ウェルズは、十分な金と完全な芸術的支配との魅力ある結びつきの見納めをしてしまった」。

今再び、『第三の男』と『市民ケーン』を見たくなってしまいました。