アマゾンという大津波が襲うのは、出版業界の次は医薬品業界だ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2270)】
10羽ほどのオナガ(写真1~5)の群れに出くわしました。ハルシャギク(ジャノメソウ、ジャノメギク。写真6~10)、コスモス(写真11、12)、キバナコスモス(写真13~16)が咲いています。
閑話休題、『大前研一 DX革命」(大前研一編著、プレジデント社)は、企業は、直ちに、全社を挙げてCX(デジタルトランスフォーメーション)を進めていくべきだと主張しています。
「これからの時代、『夢よ、もう一度』とばかりに20世紀の成功体験を追い求めるしかできない企業は、ものすごい勢いで淘汰されていくだろう。具体的にいうと、先端テクノロジーを使いこなすディスラプター(破壊的イノベーター)に食い物にされ、下手をすれば業界もろとも消滅させられてしまうのだ。それが嫌なら、方法はただひとつだ。今すぐDXを、全社を挙げて進めていくしかない」。
「読者の中には、DXと、従来の『IT革命』や『デジタル革命』の違いがわからない人もいるだろう。DXとは、単にITやデジタルテクノロジーを取り入れるといった単純なことではない。『デジタルテクノロジーを用いて、21世紀型企業に変革を図る』。これこそがDXの本質なのである」。
アマゾンについて、興味深いことが記されています。「アマゾンが日本でここまで大きくなったのは、皮肉なことであるが、東販・日販という出版取次会社のおかげなのである。アマゾンは、アメリカでは『本を大量に仕入れて、20%引きで売る』という安売り商法で急成長したが、日本ではそれができなかった。日本には『再販売価格維持制度』というシステムがあり、本や雑誌は定価でしか得ることができないからだ。そのため、アマゾンも日本では定価販売をせざるを得なくなった。しかし、その結果、アメリカであれば値引きをした定価の20%分が、日本ではそのまま収益になってしまったのである。そのため、小田原(神奈川県)に巨大な物流センターをつくることができたのだ。アマゾンの物流は、東販・日販よりもはるかに上だ。そのため、地方の小さな書店には、東販・日販よりもアマゾンに頼んだほうが早く確実に本が届く。今では地方に行くと、東販・日販が自ら書店に対し、『それはアマゾンに注文してください』といっているという話を耳にするくらいだ」。
「このように、アマゾンに日本の出版業界はすっかり席巻されてしまったが、今後は他の業界でも同様のことが起こるのは間違いない。私は、次に危ないのは医薬品業界ではないかと思っている。アメリカのサンフランシスコにあるプラクティスフュージョンは、電子カルテを管理するクラウドサービスを無料で提供しているベンチャー企業だ。開業医が高額な電子カルテのシステムを導入するのは簡単ではない。そこで、プラクティスフュージョンは、全米の開業医に自社のクラウドサービスを無料で使わないかと声をかけて、開業後わずか2年で約15万人の開業医と提携したのである。プラクティスフュージョンは、その電子カルテシステムを使って、患者のスマートフォンに診療データや処方箋を送り、さらに必要な薬が近所のどのドラッグストアで売られているかという情報も表示する。つまり、薬を売る側から利益を得ているのである。そして、これに目をつけたアマゾンは、ピルパックというオンライン薬局を買収した。その結果、患者はプラクティスフュージョンから自分のスマートフォンに送られてきた処方箋をアマゾンに転送するだけで、自宅にいながら薬を手に入れられるようになったのである。しかも、月10ドル払ってアマゾンのプライム会員になれば、配送料金は無料となり、当日お急ぎ便や日時指定便のサービスまで同様に無料で利用できるのだ。日本では、カルテの電子化が遅れているのと、日本薬剤師会がいろいろな規制をかけているため、アマゾンがこの分野に入り込むのは容易ではない。しかし、これが世界の潮流なのだから、遅かれ早かれ日本も、この波にさらされることになる。そうなったとき、多くの調剤薬局は消滅するよりほかないだろう」。この指摘には、正直言って、腰が抜けるほど驚かされました。私が長年に亘り働いてきた医薬品業界に、これほどの大津波が襲ってくるとは!