ポーの『黄金虫』に挑戦したフリーマンの『青いスカラベ』・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2314)】
【読書クラブ 本好きですか? 2021年8月13日号】
情熱的読書人間のないしょ話(2314)
ゴーヤー(写真1~6)の実は熟すと黄色や橙色になります。私の好物は、女房が冷凍した100%果肉バナナ・アイス(写真7、8)です。
閑話休題、『ソーンダイク博士短篇全集(Ⅱ 青いスカラベ)』(R・オースティン・フリーマン著、渕上痩平訳、国書刊行会)は、科学的探偵・ソーンダイク博士を主人公に据えた短篇集です。
とりわけ印象に残ったのは、エドガー・アラン・ポーの『黄金虫』を意識して書かれたと思われる『青いスカラベ』です。
ソーンダイクの依頼人は、曽祖父が残した、甲虫類のスカラベをかたどった青い印章と手紙の謎を解いてほしいというのです。その手紙には、「1833年3月4日、カイロ 我が息子へ 我が最後の贈り物として貴重なスカラベと助言の言葉を贈る。私の助言は心に留め置いてほしい。この古代エジプトの伝承には豊富な知恵が蔵されている。これをみずからのものとしてほしい。スカラベは貴重な遺産として大切にしてほしい。よく手を触れてほしいが、誰にも見せぬように。おまえの叔父ルーベンをキリスト教に則って埋葬してほしい。これはおまえの義務だし、それで報酬も得られる。弟はおまえの父から盗みを働いたが、その償いは必ずしてくれるだろう。さらばだ! 愛する父より サイラス・ブローグレイヴ」と書かれています。
青いスカラベの印章に刻まれていたヒエログリフ(古代エジプト文字)の銘文の謎をソーンダイクが明らかにすることによって、遂にルーベンの死体と素晴らしい宝石の埋蔵場所が見つかります。
ヒエログリフを解読するだけでなく、謎解きに捻りを2つも加えることで、著者は「黄金虫」を凌いだと言いたかったのかもしれません。