昔、3人の男子学生が体を共有した女から、突然、3人に会いたいという手紙が来た・・・【山椒読書論(614)】
【読書クラブ 本好きですか? 2021年11月17日号】
山椒読書論(614)
コミックス『人間交差点(9)――蒼き果てにて』(矢島正雄作、弘兼憲史画、小学館)に収められている「海からの手紙」は、3人の男にとって思い出したくない青春の物語である。
「あの頃、俺達はどうしてあんなに貧しかったのだろう・・・」と、物語は始まる。
そして現在――。3人の男たちに、突然、「もう一度一目だけでもあなた方のお顔を拝見致したく・・・」という手紙が舞い込む。今や、エリート・サラリーマン、市議会議員、判事になっている3人は、慌てて集合する。「いずれにしろ、気味が悪い話だよな・・・昔の女から突然会いたいなんて手紙もらってさ・・・金でも要求するつもりかな」。「ただ、昔、付き合っていたってだけのことなんだからな・・・」。「俺達は怯えていた。それは、瑛子が俺達(3人)のものだったからだ・・・」。
「瑛子は、中学を出たばかりのまだ子供だった。その瑛子の無防備な好意は、当然の如く、俺達の中の『獣』を刺激していった・・・」。3人は、スナックで働く瑛子にたかるだけでなく、瑛子の体を共有し続けたのである。そして、吉田や君塚に頼まれ、瑛子の働き場所はキャバレー、ソープランドへとエスカレートしていった。
江藤は瑛子を訪ねる決心をする。「行ってみようと思うんだ。あの手紙から3か月も経っているのに、何も言ってこないし、差し出し先の住所が病院っていうのも妙に気になるんだ」。
訪ねた病院で、江藤が知った衝撃の事実とは・・・。