定年になった男が、福引きで引き当てたケアンズ旅行の同行者は、60歳過ぎの自殺志願の女性だった・・・【山椒読書論(527)】
【amazon 『黄昏流星群(5)』 カスタマーレビュー 2020年1月19日】
山椒読書論(527)
コミックス『黄昏流星群(5)――同窓会星団』(弘兼憲史著、小学館)に収められている「パルサーのように」は、妻に先立たれ、寂しく定年を迎えた男の物語である。「母さん・・・定年退職の日は思ったほど感傷的にはならなかったよ。私にとっては特別な日かもしれないが、みんなにとって、普通の日でしかないものな」。
一人暮らしの松岡英三は、地元商店街の福引きでオーストラリア・ケアンズ6日間の旅という特賞を引き当てる。同行者は、同じく福引きで当選した60歳過ぎの菅原真理子。代理店の手違いか、二人はケアンズのホテルの同室に泊まることになってしまう。
英三が腰を抜かしてしまったバンジージャンプに、真理子は挑戦すると言う。「松岡さん、私はやるわよ。とても怖いけど」。
怖くなかったかと尋ねる英三に、「とても怖かった。でも、これで飛ぶ勇気がついたわ・・・。これで鳴門大橋の上から渦潮の中に身を投げることが出来る。今日のバンジージャンプは『自殺の予行演習』なのよ」。
30年前に、彼女の2歳の息子は過って観光船から関門海峡に落ちて亡くなっていたのだ。その上、彼女本人は医師から末期の膵臓がんと告知されている。
その後、二人が決断したことは・・・。