榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

日本史上で、これぞ孝子と言えるのは誰か・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2443)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年12月25日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2443)

我が家の庭の餌台には、早朝から夕刻まで、メジロ(写真1、2)、シジュウカラ(写真3~6)、スズメ(写真4~7)たちが、入れ替わり立ち替わりやって来ます。野鳥たちを観察していると、あっという間に時間が経ってしまいます。

閑話休題、私がこの世に存在しているのは、両親のおかげ、父方・母方双方の祖父母のおかげ、女房がこの世に存在しているのは、両親のおかげという感謝の気持ちから、毎朝、線香をあげています(このうち、私の母は健在)。私自身はあまり親孝行とは言えないが、『親孝行の日本史――道徳と政治の1400年』(勝又基著、中公新書)を読んでみました。

「本書は、先入観からいったん距離を置いて、あらためて古代から現代までの日本における孝について考え直そうとするものです。そのさい特に、『表彰』に注目したいと思います。日本では歴史上、何万人もの孝行者が表彰されました。孝行者の表彰とは、孝という思想、親孝行という行動、表彰という政治行為、孝子伝という文学行為、人々の反応という受容など、さまざまな要素から成る多面体です。表彰に注目することで、親孝行という抽象的な徳目は、具体的な手触りを伴って現れてくるはずです」。

とりわけ興味深いのは、これぞ孝子という定番孝子についての記述です。「17世紀の営みを土台として、江戸中期から近代にかけて、『本朝二十四孝』と題したような日本史上から選んだ孝子伝が数多く編まれました。こうした営みを繰り返して、日本史上の『代表的』孝子が定まって行ったのです。・・・中古~中世でいえば、平重盛と楠木正行がほとんどの書物で名が挙がった孝子です。・・・江戸時代の人物で定番孝子と言えば、中江藤樹を挙げねばなりません。日本における陽明学の祖と言われる藤樹は、思想の中心に孝を吸えましたが、自身も孝子として生前から知られていました。大洲藩(現・愛媛県)に仕えていましたが、近江国の小川村(現・滋賀県高島市)に住む母を養うため、仕官を辞して故郷に戻り、私塾を構えて教えながら、孝養を尽しました」。