西欧の絵画に描かれた女性像についての、澁澤龍彦のエッセイ集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2452)】
カワセミの雄(写真1、2)、セグロセキレイ(写真3)、コサギ(写真4、5)、羽繕いするアオサギ(写真6~9)、コガモ(写真10~13)をカメラに収めました。コガモの群れに混じった稀少種のアメリカコガモを撮影した野鳥観察仲間から教えてもらった水域に、1週間、通い詰め、見つけたコガモ1羽ずつを双眼鏡で観察したが、アメリカコガモは遂に見つけられませんでした(涙)。
閑話休題、『幻想の肖像』(澁澤龍彦著、河出文庫)は、西欧の絵画に描かれた女性像についてのエッセイ集です。一つだけ残念なのは、口絵以外の絵画がカラーではないことです。
とりわけ興味深いのは、グイド・レーニの「スザンナと老人たち」、アントワヌ・ヴィールツの「美しきロジーヌ」、ロメロ・デ・トレスの「火の番をする女」の3作品です。
●スザンナと老人たち――
「二人の好色の老人が、水浴中の若い女性を物陰からこっそり窺っているという、いわば『西洋出歯亀』とも名づけられるべき怪しからぬ主題の絵が、とくに16世紀のイタリア絵画におびただしく現われている。・・・17世紀イタリア・バロックの巨匠グイド・レーニの『スザンナ』も、同じ主題のもので、官能美にあふれた、異色ある作といえよう。・・・(この作品では)老人たちは物陰にかくれているどころか、厚かましくもスザンナの近くへ寄ってきて、彼女の裸身を覆う布に手をかけ、これを引っぱってさえいる。もう一歩で、猥雑な表現になりかねないような絵である。・・・このスザンナの、暗い背景から浮き出た、金色に光り輝く蜜壺のような若々しい肉体にも、同じ作者の聖セバスティアンのそれとひとしく、三島由紀夫の表現を借りれば、『ただ青春、ただ光、ただ美、ただ逸楽があるだけ』であろう」。ここまで言われては、カラーの「スザンナと老人たち」を見ずに済ますわけにはいきませんね!
●美しきロジーヌ――
「この作品は別名『二人の少女』というように、向い合った裸体の少女と骸骨とは、要するに同じ人間の別のすがたにすぎないのである。両者は互いにしげしげと見つめ合っている。この女らしく成熟した、豊満な肉体美を誇る少女もやがて、死すべき時がくれば、彼女の前に立っている骸骨のように、肉も血も失せた、乾からびた醜い形骸と化してしまうだろう。そういう寓意を、この絵は表わしているのでもあるかのようである」。澁澤龍彦は否定的だが、メメント・モリ(死を思え)の思想を踏まえているのでしょう。
●火の番をする女――
「左の乳房を半ば露出し、スカートを膝の上までまくり上げ、踵の高い靴をこれ見よがしに突き出し、あたかも挑戦するような鋭い目つきで、こちらをじっと睨んでいる高慢ちきな娘は、まるでルイス・ブニュエルの映画にでも出てきそうな感じではないか。たしかに、これこそスペイン土着のエロティシズムというものであろう」。こういう目つきの女性に出会ったら、どぎまぎしてしまうことでしょう。