『天国の鬼』には、思わず唸ってしまいました・・・【山椒読書論(657)】
【読書クラブ 本好きですか? 2022年2月3日号】
山椒読書論(657)
短篇集『喉の奥なら傷ついてもばれない』(宮木あや子著、集英社文庫)に収められている『天国の鬼』には、思わず唸ってしまった。
「まさか自分が己の母親と同じことをする母親になるとは思っていなかった。五歳の娘は毎日私を何かしら苛立たせる。だから私は娘を叩く。自尊心を失わせるために服を脱がして裸にする。娘は泣き喚く。五月蠅いから扉の外に出す。それだけのことなのだ。母もきっと、それだけの理由だったのだろう。私が彼女にどうして怒られていたのか判らないのと同じように、今、私は娘をどうして叱ったのか憶えてない。お願いです入れてください、寒いよ、お母さん」。
小説を読むのは、自分のとは全く違う人生を体験するためだとするならば、こういう作品の存在も許されるのかなと思う。