小泉進次郎の実像を知るのに恰好の一冊・・・【山椒読書論(262)】
『小泉進次郎の闘う言葉』(常井健一著、文春新書)は、小泉進次郎という若手政治家の実像を知るのに恰好の一冊である。
2012年11月の衆院解散から半年に亘り、小泉を勝手に追いかけた著者が、あたかも実況放送のように伝えることに主眼を置いて、自らのコメントは最小限に止めている点がよい。
小泉が多くの人を惹きつける秘密が明らかにされている。
選挙の応援演説では――
●「自民党好きじゃない人いるでしょ? 当たり前です」
●「会社勤めの方、自営業の方、お母さん、それぞれに役割がある」
●「みなさんは誰よりもわかっているはずです、復興という二文字の重さを。そして被災地に対して、風化させずに、絶やさない努力を続けてきた人が一体どれだけいるか。私たちはこれを、東日本大震災の被災地に見せていかないといけない」
●「たった31歳、国会議員の経験が3年しかない未熟者です」
●「原発政策への反省なくして、次の自民党を語れない」
●「政治の底力を信じている」
●「政治家の言葉が信頼されない状況を変えたい」
●「政治はプロ野球じゃなくて高校野球。負ければ明日はない」
●「『世襲はやっぱりダメだ』と言われないよう、努力を続けます」
●「過去の自民党に戻していいなんて、誰も思っていません」
●「この世界は嫉妬がハンパじゃないです」
●「『客寄せパンダ』と言われても構わない」
●「人気があると言われるのは、実力がないからです」
●「外交・安保の観点からもTPPを無視すべきではない」
●「核燃料サイクルの継続は、国際社会の理解を得られない」
●「国防費を減らさないというメッセージをはっきり出すべきだ」
被災地では――
●「前に進もうと頑張っている人を、後押しするのが政治」
●「子どもも孫も家も失ったおじいさんの言葉を私は忘れない」。
著者のコメントも、なかなか興味深い。
●本人が「選挙演説が万葉集なら、お国言葉は枕詞ですから」と言うほどの入れ込みようである。
●被災地での進次郎氏はメモ魔でもある。
●人気ほど移ろいやすいものはない。それを重々承知しているから、進次郎氏はいくら人気があっても調子に乗ることがないのだろう。
●睡眠時間を削ってでも本をよむ、読書家の進次郎氏。
●進次郎氏の発言に注目すれば、自民党政権の動きが先読みできる――。彼を追い続けるうち、筆者はそんな仮説を考えるようになった。
●進次郎氏に半年間密着する中で印象的だったのは、「改革」を連呼しながら天下国家を語りたがる従来の政治家像とは異質の、国民の言葉にじっくり耳を傾けようとする姿勢である。