榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

『ファウスト』は、好き勝手に生きてきたゲーテの懺悔の書ではないか・・・【山椒読書論(702)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年4月3日号】 山椒読書論(702)

ファウスト』(ヨーハン・ヴォルフガング・ゲーテ著、柴田翔訳、講談社文芸文庫、上・下)は、好き勝手に生きてきたヨーハン・ヴォルフガング・ゲーテの懺悔の書ではないか、と私は考えている。

この作品は2つの部分で構成されている。悲劇第1部では、主人公の老ファウストは、悪魔メフィストーフェレスと契約を結び、30歳若返る。若返ったファウストは、純情無垢のグレートヒェンを誘惑し、彼女に母親を誤って毒殺させてしまうばかりでなく、嬰児殺しの罪をも犯させ、自らは彼女の兄を決闘において刺し殺してしまう。悲劇第2部では、老夫婦を死に至らしめてしまう。最終章に至り、ファウストはグレートヒェンの霊と天使たちに導かれて聖母マリアのもとへ昇天していく。

「永遠なるものにして女性的なるもの、われらを彼方へと導き行く」と、物語は結ばれている。