榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

星野源と新垣結衣を、ますます好きになってしまいました・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2589)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年5月20日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2589)

ブラシノキ(写真1、2)、セイヨウシャクナゲ(写真3)、ホンシャクナゲ(写真4)、サツキ(写真5)が咲いています。サクラのヨウコウ(写真6)が実を付けています。

閑話休題、エッセイ集『いのちの車窓から』(星野源著、角川文庫)で、とりわけ印象に残ったのは、「人間」、「YELLOW VOYAGE」、「新垣結衣という人」の3篇です。

●人間
「『人間は、死んでも終わりじゃないんです』。2年前の言葉がフラッシュバックした。『残された者が、その人を語り、バトンを繋いでいきますから。だから、人間は死んでも終わりじゃない。それが、今回私が言いたかったことです』。その言葉で、鶴瓶噺は幕を閉じた、『人間は死んだら終わりなんや』。『人間は死んでも終わりじゃない』。この2つの言葉の間に、どれだけの想いと、憤りと、決意があったんだろう。帰り道、山手通りを歩きながらそれを想い、ひとり泣いた」。

●YELLOW VOYAGE
「何かしんどい時には、すべてが終わった『その直後』を思い浮かべる。例えば主演映画が決まり、クランクインした撮影が終わるのは2カ月後、まだまだ先は長く、すでにプレッシャーに押しつぶされそうで息苦しい。そんな時にはその仕事が成功に終わり、直後に一人でホッとしている様子を思い浮かべる。現在という名の適度な重さの野球ボールを。その辛い期間が終わった随分先にいる自分へ届くように思いっきり高く、遠くに投げるように想像する。するとそこまで自分がワープする。・・・昔から、辛い時にはそうやってすべてが終わったゴールの先を想像していた。もちろん、実際にワープするわけでもないし、ゴールまでの経過の時間が早送りになるとか、その間の記憶がなくなるということではない。『しんどい時が終わった自分をしっかり想像する』という行為は、物事は必ず終わるのだという単純なことに心から気づくための準備運動みたいなものだ」。

●新垣結衣という人
「彼女は、撮影の合間の待ちの時間も、ただ普通にちょこんと座り、静かにしている。多くの有名俳優が持っている『周りを緊張させる威圧感』や『周りに気を使わせる空気』は一切なく、おとなしいけれど、現場で面白い話が生まれれば一緒に笑うし、話しかけると気さくに話してくれる。ただ相手のテリトリー内に侵入することは決してしない、ニュートラルな状態でただそこにいる。本当に普通の女の子だ。・・・目の前の課題に向き合い、乗り越え、さらに周りをよく見つめ、現場で何か問題があると、表情にはまったく出さず、人知れずこっそりフォローしている。そんな主演俳優あまりいない。・・・10代から活躍している彼女には、想像をはるかに超えるいろいろなことがあったはずだ。最初から今のようだったわけではおそらくないだろう。そんな中で彼女は、仕事場での誠実さを見つけ、さらには並大抵の俳優がたどり着くことのできない、『普通』というものを自分の力で手に入れたのだ」。

星野源と新垣結衣を、ますます好きになってしまいました。