榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

懐かしいなあ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2775)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年11月21日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2775)

イロハモミジ(写真1、2)、ドウダンツツジ(写真3、4)、ニシキギ(写真5)が紅葉、イチョウ(写真6)が黄葉しています。キダチダリア(コウテイダリア。写真7、8)、ブラシノキ(写真9、10)、オトメツバキ(写真11)が咲いています。シシユズ(オニユズ。写真12、13)が実を付けています。

閑話休題、『銀ヤンマ、匂いガラス』(松山巌著、毎日新聞社)は、子供時代の懐かしいものがいろいろ登場する追憶エッセイ集です。

●蝋石
「蝋石は少し大きくなってもよく使った。いたずら書きばかりでなく、子どもたちが二組に分かれて遊ぶSケンや陣とりの線を引いたり、三角ベースの点数をつけるには欠かすことができなかった」。蝋石は、本当に万能でした。

●かつ節削り
「かつお節とはいわず、家の者はかつ節といった。かつ節も、一枚刃の鉋(かんな)を長方形の箱に収めたかつ節削りも、いまや珍しくなったが、私はよく削らされた」。不器用な私は、危ないと、かつ節削りはさせてもらえませんでした。

●金魚売り
「夏の昼下がりには、エーェ、キンギョヤァ、キンギョオと金魚売りがリヤカーに載せた水槽をぴちゃぴちゃ揺らしながら路地のなかに現れる」。金魚売りの声を聞くや否や、何を措いても家から飛び出していったものです。

●紙芝居
「コーン、コーン、コーンと拍子木の音が路地の奥から鳴り響く。この合図が耳に届くと、子どもたちはそれまでの遊びを止めて、一斉に駆けつける。紙芝居のおじさんが自転車に乗って現れたのは、午後二時か三時過ぎだったか。自転車に積んだ箱の、一番上の蓋を開き、紙芝居の四角い枠を組み立て、十枚ぐらいの紙を収め、それから拍子木を打ち鳴らす。子どもたちは小遣いの硬貨を握りしめて集まり、おじさんから水飴を買う。・・・ドンドドンと薄い胴の太鼓が敲かれて、おじさんはその日の演目と口上を述べて、紙芝居をはじめる」。紙芝居のおじさんの時代がかった語り口に引き込まれたものです。

●ケン玉
「私がよく遊んだのはケン玉だった」。私は、今でも、時折、けん玉を楽しんでいます。

●野外映画
「陽が落ちて、ひまわりの姿が影に隠れ、月見草が薄黄色く咲く時刻になると、野外映画に家族揃って出かける。小学校の校庭にスクリーンを垂らし、映画が上映された。夏の間に一、二回は、上映会があったと思う。新聞紙を敷いて座り、団扇片手に無料映画を愉しんだ」。私の場合は、近くの中道寺の境内で妹と見ました。

●昆虫網
「憧れたのは銀ヤンマだった。悠然と、周囲を睥睨して飛ぶ姿は昆虫の王である」。「夏休みの宿題に昆虫や押し花の標本を出したことがあった」。夏休み中、昆虫網は私の必需品でした。

●蚊帳(かや)、蠅帳(はいちょう)
「蚊帳も蠅帳もいまや珍しい。・・・蠅帳は食物に蠅がたからぬようにちゃぶ台の上に被せる網製の道具だが、いまではあまり見ることはない」。蚊帳に囲まれた空間は、別世界の雰囲気が満ちていました。

●山雀(やまがら)のおみくじ
「シジュウカラより少し大きい山雀が、ぴょんぴょんと跳ねるように飛んでいき、小さな木製の御宮の前に立ち、階段をまたぴょんぴょん飛んで、御宮の扉を口嘴で叩く。それから口嘴で扉のひもを引き、御宮のなかから、たたまれたおみくじを口嘴でついばんで戻ってくる。オジサンが山雀の前に差し出した細い棒の上に、山雀はちょこんと乗る。山雀は客の掌の前まで棒に乗って運ばれ、ついばんでいたおみくじを客の掌の上に落とす。栗色の小さな鳥が芸を見せるのだから、なんとも愛らしい」。浅草寺に参詣する祖母に付いていった時は、祖母にねだって、必ず山雀のおみくじを引いたものです。

懐かしいなあ。