榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

エッセイ集に刺激され、読みたい本が増える幸せ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2217)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年5月9日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2217)

さまざまな色合いのバラ(写真1~12)が咲き競っています。ブラシノキ(写真13)のブラシ状の赤い雌蕊と雄蕊、蕾が目を惹きます。我が家の庭では、サツキ(写真14)、ガザニア‘ガズー’(写真15)が咲いています。我が家の庭師(女房)に言われて、片隅で咲き始めたヒメヒオウギ(フリージア・ラクサ。写真16)に気づきました。

閑話休題、エッセイ集『だいちょうことばめぐり』(朝吹真理子著、河出書房新社)に刺激され、読みたい本が増えました。

井原西鶴が描く石川五右衛門の処刑の場面。「<七条河原に引き出され、大釜に油を焼立て、これに親子を入れて、煎られにける。その身の熱さを七歳になる子に払ひ、とても遁れぬ今の間なるに、一子を、吾が下に敷きけるを、見し人笑へば、『不憫さに、最期を急ぐ』といへり>。子供に対していっさい情をかけず、子供を釜底にして一秒でも長く生きようと、死から逃れようとする五右衛門のすがたに、はじめて読んだとき衝撃をうけた。これが人間のひとつの本性だと思う。西鶴は五右衛門のきわめてエゴイスティックで、人間的な部分を描いている。語り物ではやった五右衛門の辞世の歌『石川や濵のまさごはつくるとも世にぬす人のたねはたへせじ』を使わないところも、人間的な部分に焦点を置いて書かれていたからだと思う」。この件(くだり)を読んで、西鶴の『本朝廿不幸』の「我と身を焦がす釜が淵」を読みたくなってしまいました。

「大分県の国東半島に滞在していたころ、三浦梅園という哲学者が江戸時代にいたことを知った。梅園は生涯のほとんどを国東半島で暮らし、医学、哲学、天文学、生物学、政治経済学など、多岐にわたって学問を展開した。天地を先生として天地のしくみを解明したいと探求したひとで、彼が遺した本もすこし読んだけれどおもしろかった。夫の康太郎さんとはじめて食事をしたとき、『枯木に花咲くより生木に花咲くを驚け』という三浦梅園のことばが好きだと彼が言って、三浦梅園の話をするこの人はいったい何なのだろうと不可解だった」。梅園については、以前、ほんの少し齧ったことがあるが、その全体像を知りたくなりました。