駅の改札を抜けると森だった・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2242)】
13年に亘る活動の記録『オオタカの森をまもる――持続可能な循環型のまちづくり』(恵良好敏著、サンジョルディ)を読んで、3つのことを考えさせられました。
第1は、オオタカが棲息できる自然環境を守ろうという市民運動は、行政や開発公団などとの粘り強い交渉など、乗り越えねばならない多くの関門があること。
「私たちの住む(千葉県)流山は緑豊かな町です。東京から直線距離30キロのところに位置しながら豊かな自然を残してきた町です。今、私たちの町に常磐新線(現・つくばエクスプレス)の計画が進んでいます。私たちは常磐新線に反対するものではありませんが、新線によって流山の緑が消失するのを憂います。特に新線の予定地である流山運動公園から初石にかけては昔ながらの里山が残る所です。この森が『市野谷(いちのや)の森』です。この森にはオオタカが住み、サンコウチョウが渡ってきます。この豊かな森は私たちの祖先が代々守ってきた土地です。この『市野谷の森』をぜひ残して下さい。そして、次の世代に自然を残すための方法を提案させてください」。
第2は、特定の生物を守るだけでなく、生態系をそっくり残すのが真の自然保護であること。それは、人間の生活にも大きな影響を与えること。
「食物連鎖を担う生態系を『ぐるみ』で残しながら、自然を残すということに意味があるのです。単に緑があればよいということでなく、生態系をそっくり残すことが自然保護なのです」。
「大切なのはオオタカだけではありません。オオタカは市野谷の森のシンボル的生き物かもしれませんが、森を守る目的は全体の生態系の保全です」。
「差し迫っているつくばエクスプレスとその沿線開発で流山市の将来が決定されるとみて、まちのポイントを『水と緑と農業と市民参加』とし、コンセプトを『どんな街に住みたいか』で進めることになりました」。
第3は、流山市と柏市の境界線上で暮らす私が、日々、自然観察を行えるのは、本書に登場する多くの人々の努力の賜物であること。
私が参加している自然観察の会「NPOさとやま」や「利根運河の生態系を守る会」の世話役の恵良好敏、樫聡、浜たづ子、紺野竹夫、浅川裕之、新保國弘、田中利勝の諸氏に対する感謝の気持ちでいっぱいです。
本書で言及されている小冊子『オオタカのすむ市野谷の森』(浅川裕之・恵良好敏編、流山自然観察の森を実現させる会)では、この森の植物、昆虫、哺乳類、爬虫類、野鳥たちが紹介されています。