榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

幻の蝶を求めての探検とロマンの記録・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3093)】

【月に3冊以上は本を読む読書好きが集う会 2023年10月6日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3093)

ナガサキアゲハの雄と雌に遭遇したのに、残念ながら不鮮明な写真しか撮れませんでした(写真1、手前が雄)。アカボシゴマダラ(写真2)、ツマグロヒョウモンの雄(写真3)、雌(写真4)、キタテハ(写真5)、ヒカゲチョウ(写真6、7)、ヒメジャノメ(写真8)、キタキチョウ(写真9)、コミスジ(写真10、11)、アメリカシロヒトリの幼虫(写真12)、シラカンバ(シラカバ。写真13)をカメラに収めました。

閑話休題、『蝶と人と 美しかったアフガニスタン』(尾本惠市著、朝日選書)は、著者が60年前の1963年に、アフガニスタンの高山にのみ棲む「幻の蝶」の採集に挑んだ「探検とロマン」の記録です。

30歳の著者は、著名な蝶コレクターである59歳のワイアットに誘われ、幻の蝶と呼ばれるアウトクラトール・ウスバアゲハが棲息するアフガニスタンの高山探検を決意します。

1963年7月4日――

「いよいよ、本命の『幻の蝶』アウトクラトールを求める旅に出発する日がきた。朝9時、ワイアット、(通訳・助手の)シャーナワズ、尾本の3名は、大量の荷物とともにフォルクスワーゲンのミニバスにてカーブルを出発」。

7月12日――

「記念すべき日となった。・・・標高約3500メートルのこの地点で、初めてアウトクラトールの雄が飛ぶのを目撃した。・・・アウトクラトールの雄は、信じられないほど速く直線的に飛び、わずかに咲いているアザミの花を訪れるが、近寄るとさっさと逃げてしまう。赤い斜面の岩石は崩れやすく、転倒の危険もある。何度か取り逃がした末に、ようやくアザミの花に止まってくれた1頭をネットインすることができた。・・・しかし、雌はまだ最盛期(7月下旬)ではなく個体数は少なかったが、この日は幸い1頭を得ることができた。約50種類もいるパルナシウスの中で、性的2型(雄と雌の色彩斑紋が著しく異なる)を示すのは本種だけで、雌は後翅に大きなオレンジ色の斑紋があり類例のない美しさである。羽化したての雌を手にして、しばらくみとれてしまった」(写真15)。

こうして、著者は数々の困難を乗り越えて、世界で4人目のアウトクラトール採集者となることができたのです。

アウトクラトールと比べるのは畏れ多いが、私がミドリシジミの雄やメスグロヒョウモンの雌、アサギマダラの雄をカメラに収めたときの感激を生々しく思い出してしまいました。