動物の耳だけにスポットを当てたユニークな一冊・・・【山椒読書論(720)】
【読書クラブ 本好きですか? 2022年7月11日号】
山椒読書論(720)
『動物のスゴい耳図鑑――人間と比べてわかる』(川崎悟司著、宝島社)は、動物の耳だけにスポットを当てたユニークな一冊である。
●耳の裏に野生ネコの証し! トラ耳の虎耳状斑(こじじょうはん)――
耳の裏はトラ模様ではなく、黒地に白丸である。この虎耳状斑は、個体識別、母トラの子トラへのコミュニケーション、意思表示などの役割を果たしていると推察されているそうだ。
●パラボラアンテナ顔のメンフクロウ――
メンフクロウの耳は右と左で高さが違う。この耳のおかげで、正確に音源の位置を特定できるので、狩りの成功率を最高レヴェルに上げることが可能なのだ。
●ウサギの耳の長さは動物界トップ級――
ウサギの長い耳は、音を的確にキャッチするだけでなく、体温を下げる役割もある。さらに、耳を立てたり、寝かせたりすることで、仲間同士のコミュニケーションを取っている。
同系統の動物では、寒い地域では耳が小さく(例:ホッキョクノウサギ)、温暖な地域では大きくなる(例:アンテロープジャックウサギ)「アレンの法則」がある。
●脚に耳がある! スズムシの聴覚――
スズムシは、小さな鼓膜が脚にある。スズムシと同じキリギリス亜目に属するコオロギも似た構造だ。コオロギの脚をよく観察すると、小さな窪みがあり、これが鼓膜の役割を果たしている。
本書は、人間の耳と比較したイラストが理解を助けてくれる。そして、耳寄りの話が満載である。