ハーヴァード大学の数学・物理学教授が1年生向けの教材として使用している一風変わったテキスト・・・【情熱の本箱(403)】
『宇宙を解くパズル――「真理」は直観に反している』(カムラン・ヴァッファ著、大栗博司監訳、水谷淳訳、講談社・ブルーバックス)は、ハーヴァード大学の数学・物理学教授が1年生向けの教材として使用している一風変わったテキストである。
物理的学の基本的要素の多くは単純な数学に裏打ちされていることを、学生に理解させようと工夫した67のパズルが掲載されている。
手始めに、著者が代表的なパズルとしている3つに挑戦してみた。「パズル15=4つの都市が、正方形の4つの頂点をなすように並んでいる。隣の都市までの距離は100km。最小のコストですべての都市を結ぶ高速道路網を考え出してほしい。高速道路を1km建設するのに10万ドルもかかるので、全長をできるだけ短くしたい。ただし、すべての2都市間を最短経路で結ぶことは求められていないし、コストの総額が最小になるかぎり、どのような順番で都市を結ぶかも、まかせられている。必要条件はただ一つ、どの都市からどの都市へも高速道路で行けるようにすることだ。実はその答えにはちょっと変わったところがある」。
皆目見当がつかないので、次ページの答え15を見たが、チンプンカンプン。
うなだれて、次のパズル22へ。「パズル22=地球の赤道上での気温Tを考える。Tは赤道上での位置の連続関数であるとする。どの時刻にも、地球の真裏の地点(対蹠点)と気温がまったく同じであるような地点が、赤道上に必ず存在することを示せ。ヒント:熱力学の知識はいっさい必要ない。気象学や地理学の知識も必要ない」。
これまた、チンプンカンプンで沈没。
次こそはと、パズル57へ。「パズル57=長さ1mの棒があって、時刻t=0にその上に20匹のアリを一列に置く。棒のどこに置いてもいいし、最初に左右どちらに歩かせてもいい。アリは分速1mで歩いていく。2匹のアリが衝突するとどちらも方向転換し、再び同じ速さで歩きはじめる(アリどうしがすれ違ったり追い越したりはできないものとする)。棒の端に来たアリは落ちてしまう。そこで問題。最後のアリが棒から落ちるまでにかかる時間を最大限長くするには、最初にどこにアリを置いて、左右どちらに歩かせればいいか?」。
うーん、これまた、全く歯が立たず。
高校で数学と物理が大の苦手だったので、文系に進み、社会に出てから、ひょんなことから宇宙物理学に興味が湧き、本書の監訳者・大栗博司の『大栗先生の超弦理論入門――九次元世界にあった究極の理論』などを読み、時代に遅れないようにと必死にしがみついてきた私にも、意地がある!
ページを繰っていくと、「パズル11=あなたは2人のチェス名人と同時に対戦しようとしている。しかしあなたはチェスをあまり知らない。それでも少なくともどちらか一方のゲームに勝つか、または両方のゲームを引き分けに持ち込みたい。1つめのボードでは、名人が白(先手)。2つめのボードでは、あなたが白。あなたはどんな戦略を取るべきだろうか?」が目に付いた。
どう答えたらよいか分からないが、答え11を見て、どうにか理解することができた。
これに勇気を得て、パズル20へ。「パズル20=敗れても1回だけ敗者復活戦に挑むことができるトーナメント戦を、64人で戦う。優勝者が決まるまでに、全部で何試合おこなうことになるだろうか?」。
これも、答え20の助けを借りて、理解することができた。
この調子なら、自分にも理解可能なパズルに出会えそうだ。これから、その旅に出るぞ!