いのちを大切にしてほしい・・・【山椒読書論(755)】
2年11カ月に亘り、小児がん克服に健気に向かっていったが、僅か6歳で亡くなった景子ちゃん。景子ちゃんへの思いから、「いのちを大切にしてほしい」と、全国で子どもたちに「いのちの授業」を行っている、景子ちゃんの父・鈴木中人。鈴木の講演を聴いて、これだと気づいた玉置崇。『「いのちの授業」をつくる』(鈴木中人・玉置崇著、さくら舎)は、鈴木と玉置の共著である。
●子どもたちに伝えたい「いのちのメッセージ」
①君は、大きな愛に守られている――愛してくれている人がいる
②自分の「名前」を大切にする――生まれてきてくれて、ありがとう
③人は、生まれて、生きて、死んでいく――いのちの真理を知る
④今、このときを「生き抜く」――生きているのは、当たり前じゃない
⑤ひとりの人間は、「尊い存在」なんだ――「いのちの目標」を育む
⑥「助けて!」と、叫んでいいんだよ――ひとりぼっちじゃないよ
⑦絶対、親より早く死んではいけない!――お父さんお母さんは、血の涙を流す
⑧優しさで、みんなの心はつながっていく――いのちを支え合う体験をする
⑨君がいてくれるから、未来もつながっていく――いのちは一つではない
⑩家族を大切にすることは、いのちを大切にすること――寄り添う
⑪大いなるものに生かされている――手を合わせる営みを大切にする
⑫「体のいのち」と「心のいのち」がある――今も、いっしょなんだ
⑬「普通の生活」を大切にする――いのちが輝く場は、生活の中にある
⑭「当たり前のこと」を、「当たり前に」続ける――掃除、挨拶、履物をきちんとする
⑮もっと楽しい「明日がある」と信じる――無限の可能性がある
⑯「だいじょうぶ?」と声にして伝える――「普通」に接する
⑰笑顔は、こだまする――笑顔でいるから楽しくなる
⑱人生のテーマをもつ――いのちをどう使うか
⑲「いのちのバトン」を胸に生きる――未来を拓く思い
⑳幸せは、自分の心が決める――自分にとって大切なものとは
●今、「いのちの悩み」に答える
いのちの大切さを子どもたちに伝えたいと思いながら、悩みを抱えている教師は多い。それらの悩みに鈴木と玉置が答えるこの章は、教師たちを勇気づけることだろう。
例えば、「死を、子どもに話すことが不安です。大丈夫でしょうか」という小学校教師の質問に、鈴木は「大丈夫ですよ。子どもは、死に向き合うことで強烈にいのちを実感し、その子なりに受け入れて、『いのち』『生きる』思いを芽吹かせてくれます」と答えている。玉置は「『死』を話すことが不安とのことですが、その理由を自分に問い返してみるとよいでしょう。誰もが避けられないのが『死』です。生まれた途端に『死』に向かって歩いていると言う人もいます。万人に訪れる『死』を話題にすることは、むしろ必要なことです」とアドヴァイスしている。
教師でない大人にも、いろいろな気づきを与えてくれる一冊だ。