頭に柿の木が生えてきた男の話・・・【山椒読書論(756)】
『あたまに かきの き』(望月新三郎文、赤坂三好絵、フレーベル館)は、大人も愉しめる絵本だ。ストーリーも絵もスケールがどでかく、あっけらかんとしていて、実に痛快なのである。
「むかし、たいそう のんきな あんにゃが、すんでおった。ある ひなか、かきの きに もたれて ひるねを しておったと。すると、ぴしゃん ぽっこ と、あんにゃの あたまに かきが ひとつ おちたって。それでも あんにゃは、むにゃら むにゃら と、ねておった」。
「あれ ふしぎ。あんにゃの あたまさ ぷちんと、なにやら、めが いっぽん はえてきた」。
「あんにゃは あたまが おもたくなって、めを さましたって。『はてな』。あたまさ てを あてて たまげたの なんの、でっこい かきの きが はえてたもんな。それも あかい かきが いっぺえ なっておった。『や、や こら、えがった。そうだ、かきうりに いご』。あんにゃは、かきうりに なって さっそく まちさ でかけた」。
「『えー あまい あまい かき、うんまい あたまがきは いかがかやー』。まちの ひとたち めずらしがって あたまの かきに よじのぼって かきを たべると、あまくて うまいもんで、『おら みっつ くれ』、『おら いつつ くれ』 って、たちまち うりきれてしまった」。
一晩経つと、不思議なことに、また、柿が鈴生りになり、あんにゃは大儲け。面白くないのは、町の柿売りたち。彼らに酒を飲まされ、酔い潰れているうちに、柿売りたちは、あんにゃの頭の柿の木を切り倒してしまう。
何と、翌朝、あんにゃの頭の切り株には、なめこがびっしり。そのなめこを町で売って、大儲け。町のなめこ売りたちに酔い潰され、頭の木の根っこを引っこ抜かれてしまう。
翌朝、あんにゃの頭は池になっており、大きな鯉たちが泳いでいる。その鯉を売って、大儲け。町の魚売りたちに酔い潰され、池を埋められてしまう。
翌朝、あんにゃの頭は野っ原になっている。あんにゃはそこを耕して田んぼをこさえる。秋になると、うんまい米がたんとできて、またまた大儲け。
「あんにゃは いつまでも らくらくと くらしたんだとさ」と、結ばれている。
むしゃくしゃすることがあったら、この絵本を読み返して、すっきりしたいと思った。