時の経つのが速いと思うのは、人生というものが分かってきたからだ。・・・【ことばのオアシス(69)】
【薬事日報 2011年6月20日号】
ことばのオアシス(69)
時の経つのが速いと思うのは、人生というものが分かってきたからだ。
――ジョージ・ギッシング
ジョージ・ギッシングの『ヘンリ・ライクロフトの私記』の一節で、原文は「It is familiarity with life that makes time speed quickly.」である。誰の手になるものか分からぬが、この訳は絶妙である。因みに、平井正穂訳では「時が経つのを早いと感じるのは、我々が人生に慣れ親しんだ結果である」となっている。
主人公のライクロフトは、英国の南イングランドの片田舎に隠退し、さまざまな思索にふけりつつ静かな余生を送っている。移りゆく自然に心を惹かれ、読書をこよなく愛し、死について、常に思いを凝らしている。病弱で貧困の中にあったギッシングが、自分の理想とする生活を主人公に仮託したのである。
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