榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

高学歴に異常なほど敏感に反応する30歳の男女たちが、次から次へと登場する短篇小説集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2886)】

【読書クラブ 本好きですか? 2023年3月12日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2886)

ヒレンジャク(写真1~4)、オオタカ(写真5~7)をカメラに収めました。酒の摘まみになると、ノビル(写真8)を積む老人に出会いました。ネモフィラ(写真9、10)が咲いています。我が家の庭では、ユキヤナギ(写真12、13)、ムスカリ(写真14)が咲いています。因みに、本日の歩数は15,583でした。

閑話休題、短篇小説集『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』(麻布競馬場著、集英社)には、高学歴に異常なほど敏感に反応する30歳の男女たちが、次から次へと登場します。目を覆いたくなるような自虐の語りが延々と続くが、最後まで一気に読み通してしまったのは、私の胸底にも同様の感情が潜んでいるからでしょうか。

「第一志望は早稲田の法学部でしたが落ちて、唯一受かった教育学部に進学しました」。「第一志望の東大は4点足りずに落ちたけど、特に悩まず滑り止めの慶應の法学部政治学科に進学しました」。「一族の期待を背負った大学受験では、無事早稲田大学に合格し、なんとなくそのまま入学した」。「結局、私はそのまま学習院に、姉は滑り止めの慶應理工に進んだ」。「(真也くんとは慶應)大学の同期で、ゼミが一緒だった」。「東大卒ゴールドマンサックス勤務の彼のせいで、(なんとなく都内の女子短大に進学した)私は切り株から動けなくなり、独身のまま30歳を迎えた」。「高校の成績は良かったから、指定校推薦で明治に入った。早稲田落ちの一般受験の連中は見下したような感じでムカついた」。「私は地元の適当な私立大に進んで、この退屈な田舎町みたいな平らな畦道をムーヴで走っていました」。「おれたち早稲田の文構で出会ったな。おれたち文構のことを『二文』って呼んでたな」。「東京の大学ばかり受けて、でも東大は落ちて、滑り止めの慶應に満足して進学」。「僕は大阪に残りました。豊中の国立大学で、迷わずお笑い研究会に入りました」。「本当は東大にチャレンジしたかったけど、浪人はできないからお茶大を受けて無事受かりました」。「地元の公立高校から、静岡市内の偏差値55くらいの国立大へ」。「最終的に、早稲田法は落ちたが、受かった中央法と慶應経済で悩んで、後者に進学した」。「塾なんかにも通わせてくれて、無事に第一志望の慶應に合格しました」。「地元の県立大学を出て東京の会社に就職した。正確には横浜の土木系の会社」。「高校を卒業したら、適当に理由をつけて、逃げるように東京に出てきました。東京なら、学も技能もない私にも仕事が見つかると思ったし・・・」。

後味はともかく、面白い本であることは請け合います。