腸内細菌は、赤ちゃんへのお母さんからのプレゼント・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2942)】
コチドリの親鳥は天敵が近づくと、雛を守るため、ピウー、ピウーと甲高い鳴き声を上げ、雛から離れた所で自らが傷ついているかのような姿勢をとって天敵の注意を引き付ける凝傷行動を見せます(写真1~4)。ハクセキレイ(写真5)、ナミテントウの幼虫(写真6)をカメラに収めました。アメリカハナズオウ‘シルヴァー・クラウド’(写真7)の葉は、淡桃色→白色→中心部が緑色と変化します。ベニバナトチノキ(写真8、9)、サツキ(写真10)、サボテン(写真11、12)、カラー(写真13)、ゼンテイカ(写真14)が咲いています。我が家では、ヒメヒオウギ(フリージア・ラクサ。写真16)が咲いています。
閑話休題、『動的平衡(3)――チャンスは準備された心にのみ降り立つ(新版)』(福岡伸一著、小学館新書)で、とりわけ興味深いのは、●老化とは何か、●発がんとストレスの奇妙な関係、●腸内細菌は、お母さんからのプレゼント――の3つです。
●老化とは何か
「早老症では、DNA修復システムの一部に問題が生じ、この仕組みがうまく働かないのである。するとどうして老化が促進されてしまうのだろうか。ここに老化というものの正体が隠されている。老化とは風化に似ている。豪華絢爛に造られた荘厳な宮殿も、長い年月のうちに、傷つき、色褪せ、虫に食われる。釘がさびたり、建材が劣化したりする。形あるものは、時の流れとともに、形が崩れる方向に変化する。秩序も、無秩序の方向へ動く。宇宙の大原則、『エントロピー増大の法則』である。生命という高度な秩序ももちろん例外ではない。ただし生命体は、ただ風化されるがままになっているのではなく、それに必死に抵抗している。絶えず分解と合成を繰り返し、パーツを更新し、たまりやすい酸化物質や変性タンパク質をできるだけすばやく捨て、あるいは汲み出す。ミスや損傷が起こればそれを修復して手当てをする。もしその修復が滞ればどうなるだろう? ミスや損傷がたちまちのうちに細胞の中に滞留してしまうことになる。これがすなわち早老症なのだ。逆に言えば、私たちはすでに普段、ミクロな細胞レベルで、必死にアンチエイジングをしているのである。必死にアンチエイジングを行っても、結果的にエントロピー増大の法則という名の風化作用に、徐々に負けていくプロセス、それが老化なのである」。風化しつつある私は、この巧みな説明に頷かざるを得ません。
●発がんとストレスの奇妙な関係
「免疫システムがうまく働かないような状況が出現したらどうだろうか。免疫系の警戒網をかいくぐってがん細胞の増殖が進み、いろいろな場所に転移し、それぞれがかなり大きな細胞の集塊となってしまうと、もはや手遅れとなる。そして、免疫システムの最大の敵は、ストレスなのである。生命体は身体的、あるいは精神的なストレスを受けると、ストレスホルモンと呼ばれる物質(ステロイドおよびその類縁体)のレベルが上昇し、ストレスに耐えるよう身体が防御反応を起こす。戦闘態勢に入るか、あるいは逃走するか。いずれにしてもストレスから逃れようと反応する。うまくストレスをやり過ごすことができれば、ストレスホルモンのレベルは下がり、身体はもとに戻る。ストレスホルモンは免疫システムを抑制するように作用する。免疫システムを一時的に抑制することによって、免疫システムが使っていたエネルギーや栄養素を、ストレスと闘うための他の緊急システム(心拍数を上げて血圧を高めたり、筋肉運動を促進したり、交感神経系の働きをアップさせたりする)に振り向けるためである。ストレス応答は本来、一過性の防御反応であるにもかかわらず、現代人は、恒常的なストレス下に置かれることがしばしばある。これが免疫システムを常に傷めつけてしまう危険性がある。免疫システムの抑制は発がんに手を貸す。かくしてストレスと発がんが結びつくことになる」。この件(くだり)を読んで、大谷翔平の「イライラしたら負け」という言葉を思い浮かべた、イライラし易い私。
●腸内細菌は、お母さんからのプレゼント
「赤ちゃんは子宮から押し出され、そのかわいらしい、しかし大きな脳を持つ頭部を狭い産道にこすりつけながら、やっとの思いで外に出てくる。まさに生まれ出ずる苦しみだが、このとき、赤ちゃんは好むと好まざるとにかかわらず、産道(すなわち膣)の壁に口や鼻をぴったりと押し付けることになる。膣の壁は外界に直接通じており、そこはある意味で雑菌がうようよ棲みついている。赤ちゃんはこれらを無理矢理なめとらされる。赤ちゃんはお母さん以外の生命体に初めて出会うことになる。これが腸内細菌の最初の候補者となる。ちょっと聞いただけではなんともワイルドな話に思えるが、これは実はとても大切なプロセスなのである。今、私は膣の中の雑菌と書いたが、ほんとうはここに棲息している菌は、雑多な菌がランダムに居候しているわけではなく、環境と生体とのあいだのせめぎ合いとバランスによって選抜された細菌のコロニーが形成されている。細菌たちは膣内に悪い細菌が繁茂しないよう、身体を守ってくれているのである」。そうだったのか!