榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

一家殺害事件の唯一の生存者、高校1年生の長女が犯人なのか、彼女はどこへ消えたのか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2963)】

【読書クラブ 本好きですか? 2023年5月28日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2963)

アカバナムシヨケギク(写真1)、ガーベラ・ジェメソニ(バーバートンデイジー。写真2)、マツバギク(写真3)、セキチク(ダイアンサス・チャイニエンシス。写真4)、メドーセージ(サルヴィア・ガラニチカ。写真5)、タチアオイ(写真6~8)が咲いています。我が家では、アジサイ(写真9~11)、ガクアジサイ(写真12~14)が咲いています。

閑話休題、東京・豊洲のバーベキューガーデンで、ヒ素が混入した飲み物を飲んだ男女3人が死亡、4人がヒ素中毒となり病院に搬送されるという事件が起こり、その場で逮捕された丸江田逸央が殺害目的でヒ素を混入したことを認めました。

東都新聞を定年退職し、1カ月ほど前に系列の出版社の月刊総合雑誌の記者として再就職した勝木剛は、この記事を読み、12年前に担当した北海道・灰戸町で起きたヒ素による一家殺害事件を思い出します。「灰戸町一家殺害事件と呼ばれているが、実際は家族全員が殺されたわけではない。夫、妻、小学三年生の長男、そして遊びに来ていた夫の母親が死亡し、同居する家族のうちで唯一の生存者が高校一年生の長女だった。・・・すぐに匿名での報道に切り替わったのは、長女による犯行の可能性が出てきたためだ。長女だけがヒ素を摂取しておらず、また事件当時の説明が二転三転したという。容疑者が十五歳ということで、警察発表は慎重なものとなった。捜査の進展具合がなかなか見えてこないなか、長女が逮捕されないのは無実が証明されたからではなく、決め手となる証拠が出てこなかったためだとささやかれた」。

事件後、完璧に姿を消した長女・赤井三葉はどこかで生きているのか、それとも死んでしまったのか、彼女は家族を殺したのだろうか、丸江田にヒ素を渡したのだろうか、だとしたら彼女を駆り立てたものはなんだろう――この謎を解くべく、勝木は三葉の関係者たちを訪ね回ります。「三葉はどこにいるのだろう。なぜ黙っていなくなったのだろう。家に火をつけたというのはほんとうなのだろうか。火事に紛れて町を出ていったのではなく、骨さえ残らないほど焼けてしまったということはないのだろうか」。

「パソコンに向かい、豊洲バーベキュー事件と灰戸町一家殺害事件の概要と疑問点、丸江田逸央との面会内容、そこから推察できるふたつの事件のつながりをまとめているのだが、二、三行書いては削除するのを繰り返している」。

レッドクローバー』(まさきとしか著、幻冬舎)は、どんでん返し、どんでん返し、また、どんでん返し、さらに、どんでん返しと、息詰まる展開の連続なので、一気に読み終えてしまいました。推理小説としては確かな歯応えのある一級品と言えます。

ただ、世の中には、こんなに不幸な家族が犇めいているのか、自分の不幸は周りの他人のせいだと考える人間ばかりなのか――と暗澹とした気持ちにさせられました。従って、自分は幸せな人生を送っていると思っている人は、本書は手にしないほうがいいでしょう。