『忘れられた思想家』の著者の悲劇・・・【山椒読書論(798)】
【読書クラブ 本好きですか? 2023年6月22日号】
山椒読書論(798)
『忘れられた思想家――安藤昌益のこと』(大窪愿二訳、岩波新書、上・下巻)の著者ハーバート・ノーマンを知るには『悲劇の外交官――ハーバート・ノーマンの生涯』(工藤美代子著、岩波書店)がある。
日本で生まれ育ち、ケンブリッジ大、ハーヴァード大に学んだノーマンは、1946年から、突然本国に呼び戻される1950年までの4年余りを、カナダの政府代表として占領下の日本で過ごす。多忙な外交の仕事をこなしながら、気鋭の日本学者として無名の安藤昌益を発掘、紹介したのである。
その後、アメリカ上院による「赤狩り」のターゲットとされ、赴任先のカイロで自殺。享年47。