榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

『忘れられた思想家』の著者、ハーバート・ノーマンは丸山眞男と親しかった・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2160)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年3月13日号】 丸山眞男座談セレクション(下)

グレヴィレアの ‘プーリンダ・クウィーン’(写真1、2)、ヤブツバキ(写真3~5)が咲いています。

閑話休題、E・ハーバート・ノーマンの『忘れられた思想家――安藤昌益のこと』と、工藤美代子の『悲劇の外交官――ハーバート・ノイマンの生涯』の私の書評を読んだ読書仲間の大原裕氏から、ノーマンと丸山眞男が親しかったこと、『丸山眞男座談セレクション(下)』に『忘れられた思想家』誕生の経緯が記されていることを教えられました。

対談集『丸山眞男座談セレクション(下)』(平石直昭編、岩波現代文庫)に収められている「『クリオの愛でし人』のこと」(萩原延寿・丸山眞男)によって、ノーマンと丸山の親交ぶり、ノーマンの学問、人柄、『忘れられた思想家』誕生の秘話などを知ることができました。よき読書仲間を持つことのありがたさを実感しました。

●丸山がノーマンと知り合ったのは1941年、ノーマンが30歳そこそこの時であった。
●4年ぶりにノーマンが丸山を訪ねてきたのは、東大図書館所蔵の安藤昌益の『自然真営道』の写真撮影への協力を依頼するためであった。
●『忘れられた思想家』の著述は、戦前、戦中ではなく、戦後の短期間で成し遂げられた。
●丸山がノーマンと最後に会ったのは、1955年であった。
●ノーマンの「『理性の世紀』としての18世紀に対する愛着。狂信と偏見に対する嫌悪。理性への信頼といっても、人間の中にうごめくドス黒い力を無視したり、軽視したりするんじゃなくて、むしろ逆に人間を内側からつき動かす真黒な衝動の底知れない力をまともに見据えるからこそ、一片の理性とヒューマニズムに賭けざるをえない、という態度」。
●ノーマンの「反戦、平和主義」。
●ノーマンの「少数意見に対する寛容」。
●ノーマンの「非暴力」。
●ノーマンはバロック音楽を愛した。
●「人間臭い話になりますが、あるとき、ノーマンにさそわれて、渡辺一夫さんと中野好夫さんと私(丸山)で、ノーマンの車で箱根に出掛けたことがありました。夜遅くまで駄弁っていて、ぼくらはこっちの座敷で寝て、ノーマンはちょっとはなれた洋間に寝た。翌朝、ノーマンが苦笑していうのに、隣りにアベックが泊っていて一晩中ねむれなかった、ということで、それをまた面白おかしく話すわけですよね(笑)」。
●ノーマンの「無名のものへの愛着」。
●「ノーマンは何べんも、(中江)兆民は面白いですね、あんな面白い人はないですね、と言うんです」。
●ノーマンは大久保利通を非常に高く評価していた。
●ノーマンは、謙遜で、あんまり自慢しない人だが、ギボンの『ローマ帝国衰亡史』を何回も熟読したことは自慢していた。
●「人間としてのノーマン、あるいはノーマンの教養とかいうものは、彼の歴史分析の中におのずからにじみ出てくるわけでしょう」。
●ノーマンは、最終的には、駐日大使になりたいと思っていた(自死によって叶わなかったが)。