絶滅危惧種のミヤマシジミが4年で5倍に増えた!・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3141)】
ウラギンシジミの雄(写真1)、ムラサキツバメの雌(写真2。表翅で雌と識別)、ナナホシテントウ(写真3)をカメラに収めました。キダチダリア(コウテイダリア。写真4~6)、キク(写真7~11)が咲いています。シシユズ(オニユズ。写真12、13)、トキワサンザシ(写真14)が実を付けています。
閑話休題、『ソバとシジミチョウ――人―自然―生物の多様なつながり』(宮下直著、工作舎)で、とりわけ興味深いのは、著者とその教えを受ける学生たちによる絶滅危惧種のチョウ、ミヤマシジミの生態調査です。
「ミヤマシジミという絶滅危惧種の蝶とソバの実りという、いっけん無関係に見える二つの研究課題は、この町の自然環境の豊かさ、すなわち『自然のインフラ』ともいうべき共通の基盤があることを意味している。・・・ミヤマシジミがいかに貴重な生き物であるか、そしてソバの実りがいかに多様な昆虫に支えられているかを(地域住民に)気づいてもらえるだろう」。
「ミヤマシジミの生息パッチの中で個体数が多い場所を対象に、2019年から私たちが草刈りをすべて引き受けることにした。それには主に二つの目的があった。一つは、ミヤマシジミにとって棲みやすい環境を整えることで、(長野県上伊那郡)飯島町全体でミヤマシジミの個体数を回復させることである。もう一つは、草刈りの高さを変えた実験区を造り、刈り取りの高さがミヤマシジミの個体数に与える影響を数値として確かめることにあった」。この結果、ミヤマシジミが4年で5倍の数になったというのです。そして、顕著に数が増えたのは、10cm(つまり中程度)の高さで草刈りをした区だったというのです。「地際で刈ると幼虫や(幼虫の唯一の食草である)コマツナギに対するインパクトが強すぎ、あまり高い位置で刈るとイネ科草本などが旺盛に繁茂して、コマツナギを圧迫することが原因と考えられる」。
ソバとミヤマシジミの関係とは? 「まずミヤマシジミは、幼虫の食草であるコマツナギが生える農地周辺の草地に生息している。そこは、コマツナギ以外の在来の野生植物にとっても好ましい場所である。草花が咲き乱れる草地は、その蜜を求めてさまざまな昆虫が訪れる。その付近にソバ畑があれば、ソバの花に訪れる昆虫も増え、ソバの実りも豊かになるだろう。つまり、農地周辺の畔や土手の草地は、景観全体で占める面積は小さいものの、ミヤマシジミなどの希少種も含めた生物多様性の『ホットスポット』となっていると同時に、農地へ送粉サービスを提供する場ともなっている。・・・ソバとミヤマシジミには、もう一つ直接的な関係がある。私がミヤマシジミの生息地を再発見したときに、ソバの花に吸蜜に訪れていたことはすでに述べたとおりである。ミヤマシジミはソバの花を特別好きなわけではないが、近くにあれば割合頻繁に訪れている。ソバは人が育てた作物であり、食糧目的に植え付けているのだが、それが意図せずミヤマシジミという絶滅危惧種の蜜源にもなっているのである。そんな光景を目にしたとき、私は生き物と人の不思議なつながりを垣間見た気分になるのである」。
チョウ好きの私は、飯田町を訪れ、ミヤマシジミをカメラに収めたくなってしまいました。