島の生物学における最大の愉悦とは・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3159)】
イカルチドリ(写真1~6)、アカゲラの幼鳥(写真7)、シロハラ(写真8)、バン(写真9)、オオバン(写真10)、ヒドリガモの雄(写真11)、雌(写真12)、ダイサギ(写真13~15)、アオサギ(写真16、17)をカメラに収めました。イロハモミジ(写真18)が紅葉しています。因みに、本日の歩数は11,724でした。
閑話休題、『そもそも島に進化あり』(川上和人著、新潮文庫)は、島の生物に関するエッセイ集です。進化を考えるヒントがてんこ盛りです。
「島の生物学の面白さは、特殊性と一般性の2点に集約される。飛翔を最大の特徴とする鳥類であるにもかかわらず、島では飛ばない鳥が進化するという特殊性。飛ばない鳥は島で進化しやすいという一般性。飛ばない鳥が島の条件に合わせて獲得する行動の特殊性。その特殊な行動の生じる背景に合理的解釈を与える一般性。特殊性と一般性の輪廻を嗜むことが、島の生物学における最大の愉悦である」。
「島で生物が進化を始める――メインランドと異なる環境が、メインランドと異なる進化を導く。島での生物たちの振る舞いはユニークだ。これはすべての俳優が主役となる群像劇である」。
「海洋島の生物相はアンバランスである。それは海を越えられる生物のみが分布できるからだ」。
「とくに島において生じやすい現象が存在する。それは、創始者効果とボトルネック効果だ。自然選択のような有利不利による進化は一切ないが、集団の始祖が偶然もっていた性質を受け継ぎ、祖先集団と異なる集団ができあがったわけだ。この現象を創始者効果と呼ぶ。一旦少なくなった集団が再び個体数を回復したときには、生き残った個体の性質がその後の集団全体の性質に反映されることとなる。少なくなってからの集団の性質に関わる挙動は、創始者効果と同じと考えてよい。細いビンの首に敬意を表し、これをボトルネック効果、またはビン首効果と呼ぶ」。
「毒にも薬にもならない遺伝子が、偶然広がったり、逆にいなくなったりすることもある。とくに個体数が少ないと、集団全体の傾向に影響することがあるのだ。これを遺伝的浮動と呼ぶ。これもまた進化の一つの形だ。集団が小さいことで偶然が起きやすくなるのも、島の特徴である」。
「不調和な生態系と、創始者効果、ボトルネック効果、遺伝的浮動、島の進化を促進する条件が、段々とそろってきた。狭いエリアで小さな集団を維持していることが、島での独特の進化を支えているのである」。
「島では動物の体サイズも変化する。小型の動物は大型化し、大型の動物は小型化する」。
「島の動物では行動にも変化が現れる。その一つに移動性の低下がある」。
「島では、飛ばない鳥が進化する」。
「島から生物が絶滅する――島は進化と絶滅の実験場である」。