榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

治安維持法による女性逮捕者第1号になった九津見房子・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3169)】

【僕らは本好き読書隊 2023年12月20日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3169)

オオアカハラ(写真1、2)と思われる個体に出くわしました。亜種アカハラか亜種オオアカハラか迷ったが、叶内拓哉著『散歩で出会える野鳥』で「亜種アカハラは北海道では平地で、本州では高原の比較的明るい樹林帯で繁殖し、冬は台湾や中国南部、フィリピンなどで越冬するので、冬期に日本で見られることは少ない。一方、亜種オオアカハラは冬期に冬鳥として公園などに渡来するので、こちらのほうが観察する機会が多い」と説明されていること(写真3)、頭部の黒色が濃いことからオオアカハラと判断。シロハラ(写真4~6)、ツグミ(写真7)、ヒヨドリ(写真8)、カワラヒワ(写真9、10)、ジョウビタキの雌(写真11)をカメラに収めました。ツバキの園芸品種・オトメツバキ(写真12)が咲いています。大学院生になった気分で、東京大学柏キャンパスの食堂で昼食(写真14)。我が家にナミテントウ(写真15)がやって来ました。

閑話休題、『暗い時代の人々』(森まゆみ著、朝日文庫)のおかげで、軍部にたった一人で立ち向かい、「普通選挙賛成演説」、「粛軍演説」、「反軍演説」で知られる勇気ある国会議員・斎藤隆夫の凄さを再認識することができました。

個人的に、とりわけ勉強になったのは、「九津見房子――戸惑いながら懸命に生きたミス・ソシアリスト」の章です。

九津見(くつみ)房子は、1890年生まれ、16歳で社会主義者となり、戦前、戦中という社会主義にとって冬の時代に弾圧と闘い続けた女性です。産児制限運動と労働運動に奔走したため、治安維持法による女性逮捕者第1号になります。さらに、アメリカ共産党員であった宮城輿徳と知り合ったことで、リヒャルト・ゾルゲの諜報活動の一翼を担うことになります。ゾルゲ事件の発覚により、九津見も懲役8年の刑を受け、和歌山刑務所に収監されます。敗戦後の1945年10月に釈放されるが、戦後は沈黙を通しました。

自分の信じる道を歩んだため、10年近くも獄中にあった九津見を、著者はこう評しています。「なんだかオロオロまごまごした、あまり得でない生き方だが、わたしはそんな九津見房子のことを人間らしいとも思うのである」。

本書を読まなければ、危うく、九津見房子という愛すべき人物を知らないままで終わるところでした。