一枚の挿絵に心を奪われた・・・【山椒読書論(3)】
【amazon 『本へのとびら』 カスタマーレビュー 2012年1月24日】
山椒読書論(3)
『本へのとびら――岩波少年文庫を語る』(宮崎 駿著、岩波新書)を、思わず購入してしまったのは、一枚の挿絵に心を奪われたからである。幼い少女が、本が詰まった天井まで届く大きな本棚を背にして、大きな本に腰掛けて、顔を本に埋めるかのような恰好で読みふけっている絵である。床にも出窓にも本が積まれている。これは『ムギと王さま』という児童書の挿絵であるが、宮崎は「この人(エドワード・アーディゾーニ)の描く愛らしい絵は、幼児の世界にぴったりです。こういう風にペンで描くのかと参考になりました。後の時代に出てくるペン画のようにギスギスしていないんです」と述べている。
私の好きなアニメーション映画「となりのトトロ」「魔女の宅急便」「借りぐらしのアリエッティ」「コクリコ坂から」の作者が語る児童文学の世界に興味を惹かれ、この本を手にしたのだが、著者の「本を読むから考えが深くなる、本を読むと立派になるかというとそんなことはないですからね。それよりも、子どものときに、自分にとってやっぱりこれだという、とても大事な一冊にめぐり逢うことのほうが大切だと思いますね」という意見に共感を覚えた。
そして、これまで読んでいない『ムギと王さま』『長い冬』『キュリー夫人』を、無性に読みたくなってしまった。