理解不能だが、なぜか心惹かれる短歌集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3324)】
キビタキの雄(写真1~3)、遠方の暗い部分の中央にポツンと小さく不鮮明にしか写っていないがパトロール中のギンヤンマの雄(写真4)、コシアキトンボの未成熟の雄(写真5)、シオカラトンボの雄(写真6)、雌(写真7、8)、シオヤトンボの雄(写真9、10)、ミスジマイマイ(写真11)をカメラに収めました。行き合った10人ほどの中学生から、ここで捕まえたこれは何というカメか、どのくらいの大きさになるかと聞かれたので、ミドリガメと呼ばれているミシシッピアカミミガメ(写真12)の幼体で、最大28cmぐらいまで成長すると答えました。マムシグサ(写真13)が咲いています。洒落たプレゼントが届きました(写真14)。
閑話休題、歌集『くるぶし』(町田康著、COTOGOTOBOOKS)には、私には理解不能な短歌が並んでいます。
理解できないが、なぜか心惹かれる歌たちは、近づいてはいけないと分かっているのに引きずり込まれる麻薬のような妖しい吸引力を有しています。
●あの時の愛と勇気と感動が今は呪ひとなりにけるかも
●ゴミ箱に脳髄捨ててシャブ食うて鶏の爆発見ては逝く君
●前世はステゴドンとぞ嘯いて調子合わせる夜の友達
●分度器を当てて測った尻子玉言葉の奥に春ぞ埋もる
●知り合いに水だけ出して帰らせてその後わがは薄茶のむなり
●股上に罪押し当てて分岐までよろぼいありく禿げのキリスト
●革命をやりたる故かほね堅くなりつる朝からだ曲がらず
●別珍の頭巾をかむり行く人は心に葱を宿しけるかも
●たらればは人生からの贈り物馬酔木の花も月もゲームも
●期待せず一個買ひたる肉團子長持ちしろよ俺の平安
●ポエジーも今宵限りと捨小舟波のまにまに揺れる韻律
●日本の民主主義から揮発する天神地祇の祈り忘れな
●貧乏を心の奥にしまひこみ生きた男のしょぼい筋彫り
●童形の爺が顔面押し付けて笑う門より響く笛の音
●戀人を山に埋めて音樂は四日前から村に漂ふ
●見出し見てすべて信じて昂って松の廊下で鍋をする阿呆
●阿呆ン陀羅しばきあげんど歌詠むなおどれは家でうどん食うとけ
●そのそれはあかく義しいチンドン屋浮かぶ音曲迫る終局
●人間の斜面の土砂は捨てておけ孤独を作る俺の角部屋
●法律に根拠与える和太鼓をどつきまわして荒ぶ情感
●学校に知能そのままこき捨てて社会で踊るおかめひょっとこ
●悲しみを他人の顔に押し付けてわがは成るなり森の妖精
●グルニエにツルゲーネフを連れ込んでコンビ組まうと言うた歳月
●舊假名のうざみの中に宿る意思節度使だけが食べる炒飯
●阿寒湖でおまへのこつちやと言ふ友をどつき回して沈めたりけむ
●ボコボコにどつき回したヘゲタレが上司になってもおて半泣き
●欲しいなあ花も勇気も分度器も情緒の海に溺れ沈んで
●今はもう花も嵐も色褪せて昼寝するより凄いことなし
●全力で壁に向かつて駆け出して脳撒き散らし闇の色刷り
●婚礼で人骨笛を吹き鳴らし離縁されたる闇の花嫁
●今晩の寸胴鍋に蝦いれる十五年間夢を見てゐる
●スカスカの弁当悲しバス停で傾いて読む饗庭篁村
●波止場には鳩は居らない公文所で苦悶している名越朝時