芸術とは一つの抽象なのだ。・・・【ことばのオアシス(93)】
【薬事日報 2012年6月13日号】
ことばのオアシス(93)
芸術とは一つの抽象なのだ。
――ポール・ゴーギャン
画家、ポール・ゴーギャンが年下の画家、エミール・シェフネッケルに宛てた手紙の一節。
この前に、「一つ忠告しよう。自然をあまりにそっくりに描いてはいけない」という文言があり、この後は、「自然の前で夢見つつ、自然から抽象を引き出してくるのだ。そして結果よりも創造という行為について考えたまえ。造物主としての神のように創造することだけが、神の高みに昇っていく唯一の方法なのだ」と続く。
ゴーギャンの「エミール・ベルナールの肖像のある自画像(レ・ミゼラブル)」は、正にこの論理を実践している。確かに愉快な表情ではないかもしれないが、不屈の意志が滲み出ており、見る人に強く働きかける(新関公子著『ゴッホ 契約の兄弟』<ブリュッケ>)。
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