君は自由のために戦っているか――老骨・榎戸誠の蔵出し書評選(その232)・・・【あなたの人生が最高に輝く時(319)】
●『誰がために鐘は鳴る』(アーネスト・ヘミングウェイ著、大久保康雄訳、新潮文庫、上・下巻)
●『スペイン戦争――ファシズムと人民戦線』(斉藤孝著、中公文庫)
あなたは、ゲイリー・クーパーとイングリッド・バーグマンが主演した映画『誰(た)が為に鐘は鳴る』(DVD『誰が為に鐘は鳴る』<サム・ウッド監督、ゲイリー・クーパー、イングリッド・バーグマン出演、ファーストトレーディング>)を見たことがありますか?
スペイン戦争(スペイン内戦)が背景となっているこの作品は、自ら国際義勇兵としてこの戦争に従軍したアーネスト・ヘミングウェイの原作(『誰(た)がために鐘は鳴る』<アーネスト・ヘミングウェイ著、大久保康雄訳、新潮文庫、上・下巻>)によるものである。
ヘンミングウェイを従軍にまで駆り立てたスペイン戦争とは何か。スペイン戦争は第二次世界大戦の序曲となった重大事件だが、一言で言えば、フランシスコ・フランコ将軍に代表されるファシズムと、人民戦線に代表される自由主義との戦いであった。ファシズムの暴虐の嵐の中で自由の危機を感じた人々が、全世界から国際義勇軍に応募し、スペインの民兵と共に戦った。この中に、ヘンミングウェイが、アンドレ・マルローが、ジョージ・オーウェルがいた。そして、国際義勇軍に参加した只一人の日本人、ジャック・白井がいた。白井はこの戦争の最中、ファシストの銃弾に倒れてしまうのだが。
世の中には、人間として知っておかねばならないこと、いわば人生の必修科目とでもいうべきものがある。スペイン戦争はまさしく、その必修科目の一つなのだ。スペインは遠く、フランコも今や亡い。しかし、スペインの戦場で自由のために命を懸けた人々(この中には女性闘士もいた)の存在は、私たちを勇気づけてくれる。
200ページに満たない小冊子、『スペイン戦争――ファシズムと人民戦線』(斉藤孝著、中公文庫)は、58年前に書かれたものだが、現在もその輝きを失っていない。私たち日本人がスペイン戦争を知る入門書として、最高のものである。