榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

卵から孵る前から、子ガメは母ガメに呼びかけている・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3596)】

【読書の森 2025年2月8日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3596)

千葉・鎌ケ谷の「粟野の森」の生物多様性の保全活動を見学しました。小出達雄・順子夫妻を中心とする「粟野の森の会」のメンバーの25年に亘る弛まぬ地道な活動には頭が下がります。観察路沿いに設置されている解説板は勉強になりました。ドバトの羽が散乱するオオタカのキッチン(写真16~19)、フクロウの巣箱(写真20)。因みに、本日の歩数は15,073でした。

閑話休題、『饒舌な動植物たち――ヒトの聴覚を超えて交わされる、クジラの恋の歌、ミツバチのダンス、魚を誘うサンゴ』(カレン・バッカー著、和田佐規子訳、築地書館)のおかげで、ヒトには聞こえないが、自然界には動植物たちのさまざまなコミュニケーションの世界が広がっていることを知ることができました。

最先端のデジタル音響技術を駆使して、動植物たちのコミュニケーションの実態を解読・解明してきた研究者たちの頑張りには頭が下がります。

1000km先まで届くクジラの歌、超低周波音で話すゾウ、蜜の場所を教えるミツバチのダンス、魚を誘うサンゴ、歌う草木、コウモリのおしゃべりなど、興味深い事例がてんこ盛りだが、とりわけ驚かされたのは、カメの音声コミュニケーションの発見です。

若き研究者、カミラ・フェレイラは、これから生まれようとしている卵の中のカメの子は、同時に孵るタイミングを合わせるために、卵から出る準備が整っていることをきょうだいたちと伝え合っているというのです。「孵化を同時に行うことで、砂を一緒に掘り上げる。そうすることできょうだい揃って協力し合って砂浜の表面へ、穴の外へとなんとか出ていくのである。音響を使ったタイミング合わせは生き残るための仕組みのように見えてくる。産卵穴から同時に出てくることによって、個々の赤ちゃんガメが捕食者から狙われる危険をより少なくできるのだ」。

さらに、フェレイラは、卵から孵る前から、子ガメは母ガメに呼びかけているというのです。「母ガメの方からも、子ガメが孵化する時に特別な音を出している。子ガメたちが水に向かって移動する時には、水の中にいる、おとなのメスも子ガメたちに呼びかけを続ける。フェレイラは母ガメと赤ちゃんガメが一緒に泳いで川を下って、アマゾン川の水があふれ出した安全な森の中へと向かっていくことを、とうとう突き止めた。・・・フェレイラの発見は、カメの聴力に懐疑的だったほとんどの爬虫類・両生類学者たちの思い込みに対する異議申し立てであり、カメが親として子どものケアを行っていることは学者たちを驚かせた」。

知的好奇心を掻き立てられる一冊です。