源義経の自筆書状が現在まで残ったのは、運命のいたずらだった・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3651)】
【読書の森 2025年4月2日号】
情熱的読書人間のないしょ話(3651)
サラサモクレン(写真1~5)、シデコブシ(写真6~8)、ハナモモ(写真9~13)、ボケ(写真14)、ヒュウガミズキ(写真15~17)が咲いています。私の自然観察コースの一つで、アライグマが捕獲されたとのこと(写真18、池上均さん撮影)。
閑話休題、『中世の古文書入門――読めなくても大丈夫!(新装版)』(小島道裕著、河出書房新社)で、とりわけ興味深いのは、●文書の表と裏――偶然残った「源義経書状」、●味方に来てくれ! 「軍勢催促状」、●「何にてもみやげを」 秀吉の丁寧な書状――の3つです。
●源義経書状(源義経→八条院<鳥羽天皇の皇女>)
「平家滅亡後の伊予国の状況を取り急ぎお伝えいたします」という報告書です。この書状は全文、義経の自筆と考えられています。別人によって、不要となったこの書状の裏を使って袋綴じのノートが作られ、経典を写したものが残り、近代になって義経文書が発見されるという稀有な運命を辿ったのです。
●足利尊氏御判御教書(軍勢催促状)(足利尊氏→島津忠親)
「京都で戦争の準備をしているから早く来てくれ!」という内容だが、これはいわゆる「密書」と思われます。この書状が非常に小さく、葉書程度の大きさしかないのは、敵方に悟られないように使者が届ける際、携帯に便利なように作られたのです。
●羽柴秀吉書状(羽柴秀吉→亀井茲矩)
この書状は、丁寧さが随所に溢れています。「先日は何でもみやげを渡すつもりだったのに、黙って帰ってしまったので残念だった、領地のことは必ずあなたに渡すようにする」という内容だが、全体として実に丁寧な、心尽くし溢れる書状で、人心の収攬に長けていたと言われる秀吉の面目躍如です。
これまでは敬遠しがちであった古文書に、俄然、親しみが感じられるようになりました。