榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

本作品を読んだら、あの世の田沼意次はこそばゆいのではないでしょうか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3681)】

【読書の森 2025年4月29日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3681)

東京・杉並の高円寺を巡る散歩会に参加しました。氷川神社(写真1、2)、長善寺(写真3)、鳳林寺(写真4)、庚申塔等(写真5、6)、1933年創業の銭湯・小杉湯(写真7、8)、1945年創業の銭湯・なみのゆ(写真9、10)を訪れました。カやアブ除けに効果があるというオニヤンマの模型を帽子に取り付けて回りました(写真11)。

閑話休題、田沼意次の失脚後、その後の政権を担った政敵・松平定信によって、意次は賄賂塗れの政治家と決めつけられたが、近年は、時代に先駆けて貨幣経済の重要性を認識した、また、蝦夷開発や印旛沼・手賀沼干拓に取り組んだ先進的な政治家という再評価も行われています。

歴史小説『またうど』(村木嵐著、幻冬舎)は、意次を「またうど」、即ち、「全き人。愚直なまでに正直な信(まこと)の者」として描いています。政権担当時だけでなく、失脚前後も「またうど」として描出されています。本作品を読んだら、あの世の意次はこそばゆいのではないでしょうか。

私は、意次は先進的な政治家であったという説に与していますが、本作品の意次はいささいか完璧過ぎるのではないか、理想的過ぎるのではないかという印象を持ちました。

栄枯盛衰は世の習いだが、意次失脚の背景に、とりわけ関心を抱いてきた私にとって、その一部始終が生々しく再現されている件(くだり)は勉強になりました。

また、定信が、権威のある溜之間詰を願って時の政権担当者・意次に賄賂を提供していたこと、そのことを定信自身が告白していたことを知り、驚きました。