榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

分子生物学のジェームズ・ワトソンと堂々と渡り合った社会生物学のエドワード・ウィルソンという男・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3784)】

【読書の森 2025年8月2日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3784)

アブラゼミの雄とキマダラカメムシの幼虫をカメラに収めました。

閑話休題、『生物学を進化させた男 エドワード・O・ウィルソン』(リチャード・ローズ著、的場知之訳、草思社)を読み終えて、感じたことが3つあります。

第1は、バード・ウォッチャーで昆虫大好き人間の私の先達のようなエドワード・ウィルソンという人物の存在を今まで知らなかった忸怩たる思い。

第2は、ウィルソンが進化生物学・社会生物学の代表として、1歳年上で分子生物学の代表たるジェームズ・ワトソンと堂々と渡り合ったことに対する溜飲が下がる痛快な気分。

「ワトソンがいう『分子戦争』の火蓋が切られた。一方には、新たに結成され、分子生物学への忠誠を誓う、ハーバードの教授陣。他方には、ワトソンが『切手収集家』と蔑んだ、動物学者、植物学者、鳥類学者、昆虫学者といった、特定の分類群の生物を研究する生物学者たち」。ワトソンはハーバードの生物学科からフィールド科学者を一掃することを心に決めていたのです。

第3は、ウィルソンがアリから始まった研究対象を節足動物、脊椎動物、ヒトを経由して、生物多様性の重要性にまで発展させた飽くなき研究心に対する感動。

1942年に「ウィルソンは弱冠13歳にして、アラバマ州モービルの空き分譲地で、貨物船に紛れ込んでアルゼンチンから密航してきた有害生物ヒアリの侵入に気づき、米国で初めて報告した採集家となっていた」。

「彼は一度として知識の蓄積と拡張をやめなかった」。

エドワード・ウィルソン(Edward O. Wilson, 1929~2021)は、アメリカの生物学者・社会生物学者で、アリ研究の第一人者。生物多様性の保全を訴え、『社会生物学』の提唱により進化と社会行動を結びつけた。ピュリッツァー賞を2度受賞し、著書『人間の本性について』などで知られる。自然と科学の橋渡しを行い、『生命の多様性を守ることが人類の使命』と訴えた現代を代表する科学者の一人――書評を書き上げてから、ChatGPT4oに「エドワード・ウィルソンとは、どういう人物か280字にまとめてください」と依頼したら、こういう答えが1~2秒で返ってきました。