がんという難敵と闘った、生々しい記録・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2118)】
どうしてもルリビタキの雄を撮影したくて、狙いをつけた場所で1時間ほど粘ったが、出会えませんでした。私のルリビタキ探しは、つ・づ・く。ジョウビタキの雌(写真1~5)、ツグミ(写真6、7)、シジュウカラ(写真8)をカメラに収めました。
閑話休題、『闘う力――再発がんに克つ』(なかにし礼著、講談社)を読んで、なかにし礼のように気丈で自負心の強い人間にとっても、がんは容易ならぬ難敵であることが、よく分かりました。
「自分にがんが見つかる、という経験をしてみれば分かる。それはものすごく怖い経験だ。がんは今は小さくてもすぐに大きくなる。大きくなるとそれは転移する可能性がある。その可能性は無限だ。こういった事は実際に体内にがんが存在しないとまったく想像がつかないし実感できないことだろう」。
2012年2月に発見された食道がんを陽子線治療で克服できたと喜んでいた著者は、2015年2月に再発という悔しい現実に直面します。
闘病中は、「毎日を妻と、『今日も生きたね』と言ってハイタッチする生活をしていたのだ。だから習慣として好きな作家の本は読んでいたが、前回のように先人の言葉を借りて自分を勇気づけるといった余裕などはなかった。そんな発想すら虚しく感じるような絶望感が私を支配していた。・・・死霊が鉄槌を持って私の目の前に立ちはだかっている。いつ穿破が起きて死んでしまうのかわからない、言わば死のカウントダウンの最中に、希望や勇気などを持とうとすることなどファンタジーでしかないということだ」。
手術と抗がん剤治療によって再発の「がんが消えた。今度はPET-CTでも光らない。腫瘍マーカーの数値は1.3。これは正常値である。普通の病院なら、これで『おめでとうございます』と言って退院。治療も全て終わる。しかしがんセンター東病院は違った。『この状態は完全に治っているわけではなくて、そこにはまだがんがあります。抗がん剤で抑え込んであるけれども、目に見えない大きさのがんが間違いなくある』と言うのである。ただし、『確実にこの場所にある、と断言できるところにあります。ですからこれを陽子線で叩きましょう』」。
勇気を奮って、がんに立ち向かった貴重な記録です。