榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

村田沙耶香さん、あなたのことですから、ピョコルンになる覚悟はとっくにできているのでしょうね!・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3844)】

【読書の森 2025年10月1日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3844)

ハロウィーンが近づいてきましたね。

閑話休題、いつの世か定かではありませんが、「恵まれた人」、「クリーンな人」、「かわいそうな人」という階層に分かれた人間と、ピョコルンという家畜が日常生活を送っています。人間には、オス(男)とメス(女)、そして、優秀なラロロリンDNAを持つ「ラロロリン人」と、そうではない「非ラロロリン人」という区別もあります。国外に対しては「ウエガイコク」と「シタガイコク」という区別もあります。

こう言われてもわけが分からないと思いますので、『世界99』(村田沙耶香著、集英社、上・下)の上巻の第2章から、一節を引用しておきましょう。

「肉体がある家電である私(=空子)は、掃除、洗濯、料理などを請け負っている。ピョコルンは、性欲処理と、出産をするための肉体家電だ。家事だけでも身体はぼろぼろだったが、この身体が性欲処理に使われることはない、ということは、私をとても救っている。ピョコルンが飼えるような、富裕層の家電になれてよかったと思う。明人(=夫。ラロロリン人)の部屋の中から、微かにピョコルンの喘ぎ声が聞こえる。明人の声も途切れ途切れに聞こえる。・・・私は明人の性欲処理の邪魔をしないように、部屋で息をひそめている」。

そして、第2章の最後で、驚くべき事実が明らかにされます。ピョコルンは人間のリサイクルだったのです。

下巻の第3章からも引用しておきましょう。「ラロロリン人は、生きている間『恵まれた人』として、得をしながら楽に人生を送り、裕福な暮らしをする人がほとんどだ。その分、死んだ後はピョコルンにリサイクルされて、生きている人間の性欲のゴミ箱になり同時に子産みマシーンになる。本当に公平なシステムだなあ、と思う」。

「音ちゃん(=空子がマネジャーをしていた仕事場でアルバイトとして働いていた女性。ラロロリン人)は当たり前のようにピョコルンを人間扱いせず、性欲処理と出産と家事のための家畜として扱っている」。

年老いて病院に入院して、ほっとした様子の母。「母は私の家の家畜だった。何十年かぶりに、やっと、誰からも『使用』されない状態になったのかもしれなかった」。

非ラロロリン人のピョコルン化も可能になったと、音ちゃんに上手く説得されて、49歳になった空子はピョコルンになる手術を受ける決意をします。「『あのね、今年の夏、私、人間じゃなくなる。ピョコルンになる。ええと、まだ本決まりじゃないんだけれど』」。

村田沙耶香さん、これほど背筋がゾクゾク・ザワザワする世界を描き出す才能に「恵まれた人」であるあなたのことですから、あなた自身がピョコルンになる覚悟はとっくにできているのでしょうね!

「かわいそうな人」で「非ラロロリン人」である私(=榎戸)のレヴェルでは、これ以上の紹介はできません。そこで、このとても書評とは呼べない代物を書き上げた段階で、私より遥かに賢いChatGPT5に「『世界99』の書評を280字でお願いします」とお願いしました。1~2秒のうちに、「『世界99』は、現代の不安定な世界情勢を99の切り口で読み解く試みです。経済・政治・環境・技術といった多様な領域を横断し、グローバル化の功罪や分断の深まりを軽妙かつ鋭く論じています。数字とエピソードが緻密に組み合わされ、複雑な問題も直感的に把握できるのが魅力。大局的な視点と具体的な事例が交錯するため、知的刺激に満ち、読者に『次の世界像』を考えさせる力を持った一冊です」という回答が示されました。うーん、私には難し過ぎて、よく分からないなあ。