メタバース時代に価値を持つのは、とんでもない発想を生み出す妄想力だ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2747)】
【読書クラブ 本好きですか? 2022年10月24日号】
情熱的読書人間のないしょ話(2747)
ハロウィーンが近づいてきましたね。
閑話休題、『メタバース――さよならアトムの時代』(加藤直人著、集英社)は、エピックゲームズ、ロブロックス、メタ(旧・フェイスブック)に次ぐメタバース企業と自負するクラスターを率いる加藤直人の手になるだけに、臨場感に溢れており、強い説得力があります。
著者の主張を一言で言うと、「メタバースは物理法則によって規定されていた限界を取り払うことができる。実現できることの可能性は無限大となる。そのときに価値を持つのは、現状を認識して分析する能力ではなく、とんでもない発想を生み出す妄想力だ」ということになるでしょう。
メタバースの条件は、①永続的に存在する、②リアルタイム性、③同時参加人数に制限がない、④経済性がある、⑤体験に垣根がない、⑥相互運用性、⑦幅広い企業・個人による貢献、⑧リアルな身体感覚を感じることがききる身体性、⑨運営側がコントロールしなくとも秩序が生まれていく自己組織化――の9つだというのです。
「AR(拡張現実)にはないVR(仮想現実)の魅力として、土地・環境・身体の呪縛から解き放つという側面があり、その点でVRのほうが大きな市場になると考えられる」。
「現実世界を完全にシミュレートすることは不可能だが、そもそも人間の認識はヒューマンセントリックに『圧縮』されており、人為的に『デフォルメ』された世界こそがメタバースと言える」。
「産業革命以来の人やモノが移動するモビリティの時代から、人類が物質(アトム)から解き放たれるバーチャリティの時代に移行することが予想される。モビリティの時代の主役はアトムだったが、バーチャリティの時代の主役はデータである」。
読む前に想像していた以上にスケールの大きな一冊です。