ふれて構わないコーナーのほたるいかたちは、囚われの身であることを把握しているのだろうか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3934)】
【読書の森 2025年12月27日号】
情熱的読書人間のないしょ話(3934)
今日の我が家の餌台。





閑話休題、『秘密のおこない』(蜂飼耳著、毎日新聞社)に収められている『ほたるいかに触る』は、ごく短い掌篇です。
「叔父が死んだ。ほたるいかに触った」と始まり、「昼間の展示場を訪れる人は少ない。しばらく、三角形にもじゃもじゃと脚を生やしたほたるいかを見ていた。おもてへ出ると、海はもう目の前。空は曇り、波は静かだった。船も見えず、鳥もいない。この水の下に、ほたるいかの群れが。あらゆるものが、黙って、消えていく」と結ばれています。
展示場の中のふれても構わないコーナーで、ほたるいかに触りながら、こう考えます。「ふれて構わないコーナーのほたるいかたちは、囚われの身であることを把握しているのだろうか」。
生々しい触感と、「あらゆるものが、黙って、消えていく」という虚無的な言葉が妙に印象に残る作品です。
