榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

角田光代の旅のエッセイ集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3490)】

【読書クラブ 本好きですか? 2024年10月29日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3490)

ナガコガネグモの卵嚢(写真1、2)、ガのオビヒトリの幼虫(写真3、4)をカメラに収めました。

閑話休題、『いきたくないのに出かけていく』(角田光代著、角川文庫)は、角田光代の旅のエッセイ集です。

印象に残ったのは、著者が八丈島を訪れた時の一節です。「旅だ、完璧だ。自分が旅と一体化している、そのことの幸福に指の先までじわりと満たされる。すごい。なんかすごい。あまりに満たされると、もうシンプルな感想しか出てこない。でも同時に、私はすでに知っている。これは今ここでこの一瞬だけのまやかしみたいなもので、あとになって思い出すと、なんであんなに多幸感を覚えたんだろう? と首をかしげるようなことなのだ」。

「それがわかっていてもなお、私はうれしかった。旅の馬鹿げた高揚感自体、感じるのは久しぶりだった。どんな条件が揃えばこういうふうになるのかわからないけれど、もうちょっとこれを味わって、それからみんなのところに戻ろう。そう思ってずっと馬鹿みたいににやつきながら立っていた」と結ばれています。