『ジェノサイド』の作家・高野和明の手になるエンタメ小説家を目指す人向けの絶好の指南書・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3937)】
セイヨウミツバチの巣(写真1)、生きているが、なぜか地面に落下しているジョロウグモの雌(写真2、3)、シメ(写真4~7)、ツグミ(写真8、9)、ハシボソガラス(写真10、11)、ハシブトガラス(写真12)、カルガモ(写真13)をカメラに収めました。















閑話休題、2011年に刊行された高野和明の『ジェノサイド』には、ずしりと重い衝撃を受け、「ホモ・サピエンスの一員であることを考えさせられるエンタテインメントの超一級品」と題する書評をオンライン読書会「読書の森」、amazon、ブログに掲載さしました。
その高野が書いた『乱歩賞作家の創作術――エンタメ小説の書き方 初心者ガイド』(高野和明著、講談社文庫)ということなので、慌てて手にしました。エンタメ小説家になりたいという人には絶好の指南書となること間違いのない、内容の濃い一冊です。一方、私のようにエンタメ小説家などという野心はさらさらなく、趣味で書評を書き散らしている人間にも、勉強になったり頷いたりすることがたくさん記されています。
●史上最大のベストセラー作家、アガサ・クリスティが何を措いても読者に言いたかったことは、「驚いた?」だけだったと私は思います。
●日本では、「物語を作る際に『起承転結』を考えましょう」という教えがありますが、この「起承転結」なる漢詩の構成法は、小説や脚本の創作では何の役にも立たないので忘れましょう。
●学校の作文などではあまり経験しない、小説ならではの基本事項としては、「?」や「!」の後に一マス空けるというのがあります。「え? 本当?」というように。
●脚本家は、セリフで心情を吐露させるくらいしかキャラクターの内面を語る手段がなく、その他は外面描写しか行えないため、作品全体を通してこの難儀な手法で人物の内面を表現していくことになります。脚本家が書けるのは、基本的に出来事、セリフ、行動だけで、登場人物の心の中を説明することは出来ません。
●執筆と同じくらいに推敲は重要です。億劫がらずに、自分の書いた原稿を精読しましょう。推敲は、面倒な思いをする分だけ見返りがあるのです。
●自分自身をスポーツ選手と同じだと考えましょう。一流のアスリートは、試合をする時だけ頑張っているのではありません。普段のトレーニングも、休養の取り方も、そうしたことを考え抜く思考力も凄いのです。あなたも原稿を書く時だけ頑張ろうとしないように。スポーツの勝敗が試合ではなく、普段のトレーニングの結果であるように、原稿を書いていない時にあなたが何をしているかで勝負は決まります。
●資料に最初に目を通す段階では、参考になりそうな箇所に付箋を貼っていきます。
●未知の領域について独学する場合、かなり効果的な二つの方法があります。「一人家庭教師」と「一人ディベート」です。「一人家庭教師」というのは、勉強中の特定の分野について、目の前に生徒がいるつもりで頭の中に説明を思い浮かべてみる方法です。「一人ディベート」は、賛否の分かれる問題について学ぶのに有効です。自分が賛成派と反対派の両方を受け持って、一人で主張を闘わせるのです。
●『明鏡国語辞典』は、小説家の原稿執筆を離れた所からそっと見守り、いざとなると救いの手を差し伸べてくれる優しい母親のような辞書です。とにかく温かいのです。「他の辞書を引いても分からなかった疑問を、最後に『明鏡』が解決してくれた」ということを何度も経験していますし、語の説明だけでなく、書き分けに迷う漢字表記についても解説してくれているのも本当にありがたいです。【私も長年、『明鏡国語辞典』を愛用しており、必要に応じて『岩波国語辞典』を併用しています】
●仕事で使っているパソコンは、ウインドウズOSのデスクトップ型です。機械本体に二種類の外付け記憶装置を繋ぎ、常に原稿をバックアップするようにしています。【私も、明日、電器店で外付け記憶装置を購入しなければ!】
巻末には、高野の全作品解題がどーんと陣取っています。『ジェノサイド』が世に出るまでの大変な作業が正直に書かれています。「結局、取材は執筆開始前に一年間を費やし、その後も脱稿直前まで続けたので、合計で二年五ヵ月間に及びました。文献資料の量は、段ボール箱で七箱分です。尚、連載一回目の原稿料が振り込まれるまでの一年半の間は無報酬でした。妻子がいたら、とてもではないが書けなかった作品です。この時は、『家庭を持っていないことまで自分の武器にしてしまえ』と思っていたのでした」。「『ジェノサイド』ではストーリーもストーリーテリングもスケールも、欧米のエンターテインメント作品と同列に論じられても引けを取らないような完成度を目指しました」。「今まで手がけてきたすべての作品の中で、この『ジェノサイド』の時だけですが、『これ以上、少しでも考えたら気が狂う』という恐怖を感じて思考を急停止させたことが三回ほどありました」。このように凄絶な背景を持つ作品だからこそ、私たち読者に、ずしりと重い衝撃を与えるのですね、高野さん。
