マチガイ主義、あんがいわるくないと思うんですがね、私は・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3965)】


『編集の明暗 津野海太郎』(津野海太郎著、宮田文久編、黒鳥社)で興味深いのは、●ウィキペディアとマチガイ主義、●開放された書棚の人、●目次癖――の3つです。
●ウィキペディアとマチガイ主義
よくみんな、ウィキペディアはまちがいが多い、あんなものゴミの山だ、というでしょう。・・・そこには、かれら、つまりウィキペディアの人たちが覚悟して選んだやり方が必然的にもたらしたまちがいという面もないわけではない。・・・この連中、どうやら確信犯的なマチガイ主義者らしいぞ。と、すぐに感じた。・・・旧来の百科事典の「マチガッテハイケナイ主義」とは逆に、われわれはあくまでも「マチガイ主義」でいくぞ、と考えているらしいことがまっすぐつたわってくる。・・・骨がらみの「マチガッテハイケナイ主義」をじぶんから引きはなすのは、けっこうむずかしい。・・・マチガイ主義、あんがいわるくないと思うんですがね、私は。
●開放された書棚の人
本とのつきあいが、じつに上手な人がいる。おだやかで、へんに肩肘をはらない。私はだめ。自分が本をつくる仕事にかかわっているせいもあってか、思いこみがつよすぎ、どうしてもギクシャクしてしまう。・・・私の知るかぎりでいえば、林光さん、木島始さんなどが、本とのあいだに幸福な関係をむすんでいると見える人だ。・・・よい読者は出版社をそだてることもできるのである。
●目次癖
長いあいだ編集の仕事をつづけてきて、自分の編集術のかなめは目次術らしいということに気がついた。・・・じつは私は、こうした自分の目次癖にうんざりしているのである。・・・私程度で鬼だとすれば、おおかたの日本のサラリーマン諸氏が鬼であろう。仕事が人を鬼にする。鬼は世界を理解する一つの型に習熟して、そこから外にでることができなくなる。会社と会社との関係だけを世界と思いこみ、そのような会社世界でのふるまい方しか身につけてこなかった男たちが、定年後、どう生きていけばいいのかわからずに茫然としてしまう。私と無縁の話ではない。
私は編集者ではなく一読者に過ぎないが、何度も頷いてしまいました。
