榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

江戸時代寛政期の江戸・日本橋にタイムスリップし、蔦屋重三郎の「耕書堂」で働いたら・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3965)】

【読書の森 2025年10月22日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3865)

江戸でバイトやってみた。寛政期編――蔦重、北斎、馬琴たちと働いてみた』(櫻庭由紀子著、くろしまあきら絵、技術評論社)は、ちょっとややこしい物語です。

平成・令和時代の七緒と、昭和生まれの篠崎信房が、江戸時代寛政期の江戸・日本橋にタイムスリップし、蔦屋重三郎の「耕書堂」で働きながら、勝川春朗(後の葛飾北斎)、喜多川歌麿、山東京伝、瑣吉(後の曲亭馬琴)、太助(後の式亭三馬)、宇吉(後の柳亭種彦)、十返舎一九などと巡り合います。

この物語を通じて、松平定信の寛政の改革で身上を半分に減らされてしまった蔦屋重三郎、そして、彼を巡る人々の発想や行動、生き方を実感できる仕掛けになっています。随所に、楽しく学べる工夫が凝らされています。

個人的に、とりわけ興味深いのは、「松平定信の失脚と、その後」です。何と、引退後は、自分が統制の対象とした浮世絵や戯作に親しんだというのです。さらに、あれほど毛嫌いしていた吉原を描いた『吉原十二時絵詞』を制作したというのです。