フランツ・カフカの魅力にとりつかれた人たちの、とっておきの話・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3319)】
【読書の森 2024年5月13日号】
情熱的読書人間のないしょ話(3319)
一日中、雨ゆえ、読書三昧。
閑話休題、『カフカふかふか――とっておきの名場面集』(下薗りさ・木田綾子編著、白水社)では、フランツ・カフカの魅力にとりつかれた人間の集まりであるカフカ研究会のメンバーたちが、とっておきの話を披露しています。
個人的に、とりわけ興味深いのは、●『掟の前』と『訴訟(審判)』との関係、●『城』の視点、●カフカ指数――の3つです。
●『掟の前』と『訴訟』との関係
<掟の前に門番が立っていた。そこに田舎の男がやってきて、「掟の中へ入れてほしい」と魂願したが、門番は答えた。「今はだめだ」>。これは『掟の前』という作品の冒頭部分ですが、この作品は、元々は長篇小説『訴訟』の一部として書かれたというのです。なるほど、カフカの作品に共通する「もどかしさ」を象徴するような一節ですね。
●『城』の視点
『城』は主人公のK視点の小説、つまりKが目にした物事が叙述されている小説です。逆に言えば、K以外の登場人物が何を考えて話したり行動したりしているのか、その心情は書かれていないのです。こういうことは、カフカの小説には、よく見られることだというのです。
●カフカ指数
「カフカ指数」とは、2006年にフランスで導入された指数で、申請の手間や許認可に要した時間など役所の非能率ぶりを100段階で示すというものです。こんな名称に使われるほど、カフカと言えば「官僚組織と闘う主人公」というイメージが浸透しているというのです。確かに、『訴訟』のヨーゼフ・Kも『城』のKもそうですね。彼らが対峙する官僚組織が理不尽の塊ということは、残念ながら現代も変わっていません。