フランツ・カフカって、こんな人だったの?!・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1313)】
紅葉・黄葉観察会に参加しました。イロハモミジ、ウワミズザクラ、クヌギ、イチョウの紅葉、黄葉を楽しむことができました。因みに、本日の歩数は21,493でした。
閑話休題、『この人、カフカ?――ひとりの作家の99の素顔』(ライナー・シュタッハ著、本田雅也訳、白水社)は、フランツ・カフカに関する99の小さなエピソードからカフカの全体像を浮かび上がらせようという試みです。
●カフカ、高校卒業試験でカンニングする。
●カフカ、システムに則り体操する。
●カフカは嘘がつけない。
●カフカがつい泣いてしまうこと。
●カフカはお上品でない。
●娼婦のところで。「売春婦のもとに通うこと、それは当時の市民層の男性にとって、さしあたり倫理上のというよりはむしろ衛生上の問題であって、それはカフカも同様だった」。
●カフカ、ある絵に思い沈む。
●カフカは医者を信じない。
●カフカは予防接種など効果なしと思っていた。
●カフカとアメリカ・インディアン。
●カフカはヴォルテールのようになりたい。「カフカが(ヴォルテールが描かれた古い銅版画を見て)感嘆したのは、『選ばれし』人間だからというだけでなく、内的あるいは外的障害によって気をそらされることなく、自分がこれと決めた仕事に向かって創造的に、当意即妙に、一心不乱に取り組む人間すべてに対して、なのだ。だからこそカフカにとって、朝起きてズボンをはく前にさっそく口述筆記を始める作家(=ヴォルテール)が、なんとも魅力的に映ったのである。午前中を職場で過ごす自分を、脆くて惑わせがちで数か月間途切れてしまうことたびたびの我が文学的創造力を思えば、なおさらのこと」。
●カフカ、書評を書こうとする。
●ザムザ一家の住む家。
●カフカ、書き間違える。
●城への最初の一歩。「おそらく1922年1月終わりに、クルコノシェ山地のシュピンドレルーフ・ムリーンで書かれたこの断片は、長編『城』のための最初の草稿である。書いてすぐに、カフカはこの書き出しを破棄したらしい。次に書かれた草稿には、冒頭部にかの有名な『到着』の章が置かれている。その草稿は、最初は『私』を語り手として書かれていた。その一人称の語りの視点をカフカは第3章の半ばまで書いたところでやめ、三人称の語りに戻している。そこではじめて主人公の名を、『審判』の主人公と同じ『K.』と決めた」。
●殺人鬼、ヨーゼフ・K。
●カフカ、ネズミを怖がる。
●カフカ、川に突き落とされそうになる。
●カフカとブロート、もう少しで億万長者になったこと。
●カフカ、オリンピックでの勝利を夢見る。
●カフカ、留守番電話を発明する。
●カフカ、サインを偽造する。
●カフカ、ゴーストライターになる。
●カフカとブロート、カジノで旅費をする。
●カフカ、地下鉄に乗る。
●カフカ、回転木馬に乗る。
●パスポートなしで国境を越える。
●カフカ、人生相談にのる。
●カフカ、悪魔になる。
最後の恋人、ミレナ・イェセンスカに宛てた手紙の中で、カフカは自身の肺結核について、こう綴っています。「自分に負わされた心配や苦痛に、脳みそがもう耐えられなくなった、というわけです。脳みそは言います。『もう限界だ。だが全体の維持こそが大事だと思うやつがここにいるなら、そいつにおれの重荷をすこしばかり引き受けてもらおう。それでもう少しは持つだろう』。そこで肺が手を挙げます。肺には失うものもたいしてないのでした。ぼくのあずかり知らぬところで進められた脳みそと肺とのこの取り引きは、ぞっとするようなものだったでしょうね」。
親友、マックス・ブロートに宛てたカフカの遺言には、こう書かれています。「ぼくが書いたもの、と認めていいのは次の本だけだ。判決、火夫、変身、流刑地、田舎医者。それと短編では断食芸人。この5冊と短編は認めると言っても、あらたに刷って欲しいとか後世に残って欲しいとかいうんじゃない。まったく逆で、すべて消え去ってくれたほうが、ぼく本来の望みにかなっている。・・・それ以外にぼくが書いたものは・・・みなすべて例外なく焼き捨ててほしい。できるだけ早くに、そうしてほしいんだ」。ブロートがこの依頼を守らなかったために、今日、私たちはカフカ作品を読むことができるのです。
本書のおかげで、カフカの作品から受けるカフカの印象とは、かなり異なるカフカに出会うことができました。