榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

何もかも私とは正反対な著者・・・【山椒読書論(150)】

【amazon 『7つの動詞で自分を動かす』 カスタマーレビュー 2013年3月6日】 山椒読書論(150)

この著者は何もかも私とは正反対だなと感じるといったことは、私の読書体験では滅多にないことなので、正直言って、読み終わるまで戸惑ってしまいました。

7つの動詞で自分を動かす――言い訳しない人生の思考法』(石黒謙吾著、実業之日本社)では、「ぶつける」「分ける」「開ける」「転ぶ」「結ぶ」「離す」「笑う」という7つの動詞+「捧げる」という動詞をキーワードに、51歳の著者が自分の人生を率直に振り返っています。さまざまな困難を何とか乗り越えて、現在は著述業・編集者・分類王として活躍している著者の言葉は、若い読者に生きていく上でのヒントを与えることでしょう。

何もかも正反対な私ではありますが、「ぶつける」の章の「会社員だって与えられた仕事だけをやっていてはつまらないはず。与えられた枠組みの中で最大限飛び出して新しいことを生み出していこうと『もがく』プロセスが楽しいもの。これって、主婦業でも同じでしょう」という言葉には、私の経験に照らして、納得してしまいました。

「開ける」の章の「飾らない人、背伸びしない人、虚勢を張らない人、自分を大きく見せない人、腹を割って話す人。そんな人にみんながなってほしい。僕は、ありのまま、思いのままを素直に、過不足なく出していける人が大好きです」という部分では、見栄を張らない人が大好きな私は、思わず頷いてしまいました。

「転ぶ」の章の「『(心が)折れる』というのは途中からぽきっと折れますが、『転ぶ』は根っこから倒れる。そこが大きな違いです。・・・大学入試、入社試験などで希望通りいかないのも、人生という長い目で見たら、転んでいる状態と考えるといい。まず、気が楽になる。そして、ああ、これはバネが飛び出す前の力をため込んでる状態だと思うことが、その後に対する、前向きな具体的思考につながっていくはずです」という件(くだり)では、著者より長く人生を過してきた私は、「まさに、そのとおりだ。企業や組織でも一緒だ」と呟いていました。

「離す」の章の「よく、あの人がイヤだイヤだといつも愚痴を言っている人を見かけますが、ああなんと心と脳のキャパシティの無駄遣い・・・と思います。端的に言うと、そんなイヤな人なら話題にするのを、というか、脳に呼び出すこと自体をやめればいいわけです。その人の存在を頭の中から離せばいい。仕事仲間とか親戚とか、捨てるわけにはいかない関係というのは当然あるわけで、だからこそ離す、のです」に関して、私の場合は、嫌なことを経験したら、年月日、場所、相手にされた、あるいは言われた嫌なことを具体的にメモに書き、それを机の滅多に開けない引き出しの奥のほうにしまい込んでしまうようにしています。この方法だと、すっきりして、その嫌な体験を片づけることができるから不思議です。そのメモの存在を忘れてしまうことが多いのですが、たまたま何カ月後かにそのメモを見たとしても、嫌な思いをした当時とは状況が大きく変わってしまっていることがほとんどです。

私とは正反対と言っていながら、意外に引用が多くなってしまいましたね(笑)。しかし、私が一番強い共感を覚えたのは、「では、さまざまな執着を減らすための超シンプルな究極の方法をお伝えしましょう。それは、常に『毎日せっせと死に向かっている』と意識すること」という言葉です。